リレーコラムについて

女でよかった

松原紀子

私が利用している京王線は、いちはやく「女性専用車両」を設けた電車である。たぶん一生乗ることがないであろう男性諸氏に申し上げると、これがすっごくいいんだなあ。女性は男性に比べて体が小さいから、さほど混雑しない。深夜11時以降なので若い人が多く、いいにおいがする。髪の色もファッションもさまざまで、すごく自由な空気がある…。

断っておくが、私はフェミニストでもレズビアンでもない。男の可愛らしさをこよなく愛している。ついでに言うと結婚も早かった。が、30代あたりから女性を尊敬することが増えてきた。子供を産んだ友人たちも「女の子でよかったわー」あるいは「女の子がよかったわー」と言っている。なんでも、女の子は丈夫で成長が早くおとなしくて育てやすいそうだ。

過日、ラジオCMで、すてきな女性たちとお仕事した。矢井田瞳さん。ステージでは大きく見える彼女の素顔は、気さくで小柄なお嬢さんだ。気遣いがあって頭の回転が速い。家族だったり大阪だったり、自分のスタンスをとてもよく理解していて、それをエネルギーに変換できる人。世界のヤイコは、大阪弁で焼き鳥屋の兄ちゃんの話をするときがいちばん自然で美しい。
弱冠24歳の映画監督、新藤風さん。大監督のお孫さんでありながら、独立独歩、自分の映画の世界を目指す。年齢よりずっと大人のポリシーと、年齢相応のビビッドな感性をもった人。「ナイフのようなナイーブ」というコピーがかつてあったけど、ホントそんな感じ。映画賞を総なめした「ラブ・ジュース」を見てみてください。ピリピリ伝わってくるから。
「プラナリア」で直木賞を受賞した山本文緒さん。さすが作家だけにお話がおもしろくて、かなりの時間雑談で盛り上がってしまった。直木賞作家らしいするどい観察眼と、らしからぬミーハーさ。さすが女を徹底的に描ける人だけある。
これだけ活躍してる方々であっても、ピエヌを差し上げたら、一様に少女のように喜んでくださった。この無邪気さと純粋さこそが、彼女たちをますますパワフルに、魅力的にしているのだと痛感した。

かつて私が新人の頃、「女はすぐやめられるのだから、続けることがいちばん大事だ」とよく言われた。とにかくその教えだけは忠実に守り、細く長くやっている。この飽きっぽい私がだ。少なくとも家計を支えるためじゃなく、好きだという理由だけで仕事をしてこられたのはラッキーだったと思う。これもひとえに女に生まれたおかげかも。神さま、今度生まれてくるときも、女にしてね。
 
資生堂 松原紀子

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