リレーコラムについて

自分中心

松原紀子

私が何年か前にダイエットを決意したのは、洋服売り場の試着室であった。折りしもその秋、ファッションはスリムへスリムへと向かっていた。9号サイズのパンツが太ももの途中で止まってしまった瞬間、私は思った。(これじゃ、ただの中年のおばさんじゃん!)。「歳だから」とか「忙しいから」という言い訳もこれ以上増やしたくなかった。おしゃれに参加できないようじゃ、もうおしまいだ。私は不退転の決意でダイエットを開始した。

自分がそこにいることって大切だ。外野に立って評論家みたいになるのだけは避けたい。「まあいいや」と思っても仕事は進んでいくが、まあいいや程度の出来になる。
昔よく、「コピーは足で書け」と言われたものだが、確かに百の資料より現場を見るにこしたことはない。からだの動きは鈍くなってきたものの、店頭でお客さまがどの色を手にとるか横目で見、スーパーに行けばレジを待つふりをして人の買い物カゴをのぞきこむようにしている。

発想だって、自分の未知の部分からはぜったい生まれないだろう。
思うにマーケティングも、理論や調査の数字だけでない。自分をそこに置いてみて、見聞きし感じるノーマルな感性から生まれるんじゃないだろうか。

田辺聖子さんが、「唐鏡」というタイトルのエッセイを新聞に寄せられていた。以下は抜粋である。
「お化粧とは自分自身との対話である。(中略)肉体・精神の不調で再生が難しい人は、自己暗示をかけてください。自分で鏡を見て(なんて、美しい)とか(かっわゆい!)と思ってください。これは王朝の昔からで、清少納言は「枕草子」の中で「心ときめくもの」の一つに「唐鏡の少しくらきを見たる」をあげている。舶来の上等な鏡だけど、少し曇りがきている。そこに映る自分の顔は、欠点がかくれ、(あたしってこんなに美人だった?)と心ときめくのである。」

自分にときめきを感じたり、自分がおもしろいと思うことは、やはり大事な原動力なのである。

というわけで、月曜が祝日なのをいいことに、自分勝手に4回の連載ですませてもらいました。これも引き出しの少なさによるものです。迫田さん、ごめんなさい&ありがとう。
さて、来週からは、引出しの数では私などそばにも寄れない長井和子さんの登場である。なんせ、ベテラン主婦からコピーライター、社長、校長、レストランのオーナー、最近は本2冊を上梓した超パワフルウーマン。みなさん、お楽しみにね。

資生堂 松原紀子

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