リレーコラムについて

おしゃべりしながら、はたらく。

川原綾子

宮本常一の『忘れられた日本人』という本のなかに、機械を使わず田植えを行っていた頃、女たちはおしゃべりや歌をうたいながら、田植えという労働をとても楽しんでいた、というエピソードが出てきます。似たような時間が、いま私のまわりにもあります。

東京のデザイナーのユミさんと私は、酒田市に住む料理研究家のユカさんが「自分の体験を表現する」ためのサポートを、ときどき一緒にしています。

ユカさんは2024年7月の市内の八幡地域大沢地区の豪雨災害で、土砂に埋まるような大変な思いをされました。そのときの記憶を、超個人的な視点から「つぶやき」として書き残しており、復興が少しずつ進む現在も、日々の心模様を綴り続けています。

たとえば、豪雨直後のつぶやきはこんなふう。

泥沼にハマり死にかけた後
自宅にたどり着き
腹ペコで手に取ったカップ麺
まさかの洗礼
「チックショー!!」
この日、2度目 天を仰ぐ
ネズミのかじり跡
この家では、日々、野生のネズミと
トムとジェリーのような
攻防戦を繰り広げていました。
(三浦友加/ 2024年7月)

過酷な被災体験であっても、こんなふうに少しのユーモアが混ざっているからこそ、そのリアルな手触りがまっすぐに心に響いてきます。

作品を読んで感想を伝え合い、デザインを形にしていく。そんな私たち3人のやり取りは、どこか昔の「女たちの田植え」に似ている気がするのです。「ここ、どうしたい?」という本題の合間に、お互いの家族の近況を挟んだり、「いまふと話したくなっちゃって」と関係のないことを語りだしたり。オンライン越しに、横並びで泥に足をとられながら、わいわいと田植えをしているような感覚にもなるのです。

一見すると不必要な雑談のようですが、このメンバーでものづくりをするには、それこそが絶対に必要なプロセスのように思います。おしゃべりを楽しみながら、気がつけばやるべきこともすごくはかどっている。とてもいいチームだなと思います。

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