リレーコラムについて

私をイタメシ屋に連れていかないで。

山中律子

「山中さん、イタリア料理、好きなんだよね。
東京で一番好きなイタリアンどこ?僕はねえ・・」
この手のイタ談義がいちばん苦手です。

それは、好きな店は「ない」からです。
そして、イタリア料理屋には「行かない」からです。

私の好きなイタリア料理は、残念ながら日本にありません。
それはイタリアにしかありません。
だから、こりゃ自分で作るしかない、と
イタリアまで習いに行ったわけです。

たとえば、
 小麦粉と卵だけで作った打ちたてのパスタ生地を、うすく
伸ばして、小さく切って、中にリコッタチーズを詰めて、巻
いて、茹でて、セージとバターだけで作ったソースにさっと
絡めて食す餃子みたいなパスタ。
 野菜はいっさい入れず、鶏肉だけを5時間煮込み、肉だけ
でダシをとった限りなく透明なスープ。
 トマトソースでゆっくり煮込み、鍋ごとテーブルに置いて
食べる、新鮮でふかふかのウサギ。
 ズッキーニの皮だけを小麦粉をまぶして揚げたカリカリの
前菜。
 うわ、この肉うまーい、と感じる前に、まず、うわ、この
油うまーいと感じてしまうトンカツ。
 ・・・・・・

すべて挙げれば、きりがありませんが、

麺嫌い、肉嫌い、油嫌いの私を、
生麺と、ジビエ肉と、揚げ物を毎日食べなければ
気が済まない体質に豹変させる味覚が、
確かにイタリアにはあるのです。

ことごとくシンプルなのに、ことごとく旨い。
そこらへんの食材でも、その持ち味を
最大限有効利用するからこそ成し得る、
香り、味、歯ごたえ。

そんなイタリア料理を食べさせてくれる技が、土壌が、
残念ながら日本のイタメシ市場には、皆無です。

なんて言っていると、かなり偉そうです。
腕一本で食ってるイタリアンのシェフに怒られそうです。
でも、これだけは言えます。
奴ら、かなり儲けてます。

だから、
私は、ますますイタメシ屋にお金を費やすのが
イヤになりました。

もし、
ごちそうしてくださる場合でも、
どうか、私をイタメシに誘わないでください。
その場合は、わたくしが、わたくしの家で、
イタメシをごちそうします。

  • 年  月から   年  月まで