リレーコラムについて

君の名を叫びたい

村山覚

8年ぶりにバトンがまわってきた。

当時のコラムを読み返したらJRAデビュー半年の牝馬、
ウオッカについて書いていた。「桜花賞はウオッカ」
という渾身のダジャレ予想は外れて、結果は2着。
しかし翌月には日本ダービーを制し、ジャパンカップや
天皇賞などG1レースを計7個も勝った。リレーコラムで
取り上げて思い入れもあったので、レースを観ながら
何度もその名を呼んだ。いや、叫んだ。

ドラマチックなスポーツが好きだ。
例えば、甲子園。

高校では吹奏楽部だったので、夏になると野球部の
応援に駆り出された。県大会の決勝までいったことも
あったが、結局甲子園には縁のない高校生活だった。
約十年後、わが母校は悲願の甲子園出場を果たした。
「甲子園で母校支援」要請が吹奏楽部の顧問から届き、
憧れの地で高校生と一緒に応援歌を吹いた。知らない
新曲がいくつかあったので、楽器を口から離して、
選手の名を叫んだ。

球場で手にするものが、
トロンボーンからビールに変わった。

屋根無しの野球場でビールを飲むのが好きだという
不純な動機で、スワローズのファンクラブに入った。
今月は悪夢の9連敗を喫した。点を取って席から
立ち上がって、東京音頭をヤートナソレヨイヨイヨイ
できなきゃスワローズじゃなくて、座ろうズだ。
神宮でも当然、名を叫ぶ。ハタケ!シンゴ!ユウヘイ!

名前をたくさん叫ばれる人と言えば、
アイドルグループの皆さん。

東京に転勤してしばらくした頃、某アイドルグループを
起用した広告キャンペーンを担当した。が、曲を知らない。
名前と顔を覚えられない。10代の女の子に興味がない。
とりあえずTwitterやまとめサイトを毎日読むことにした。
よく知らない小娘が歌うよく知らない曲が、あの子の
キャラクターを生かした隠れた名曲へと変わっていった。
関係者席ではなく、自力でチケットを取るようになり、
推しメンの名をサーケービー‥‥

   叫ぶ名がある人生は、幸せだ。

広告の仕事は応援団をつくることだと思う。
ファンや当事者が口にしたくなるようなエールや
応援歌を書けたらいいなと思っている。

NO
年月日
名前
5775 2024.10.10 飯田麻友 令和の写経
5774 2024.10.09 飯田麻友 最後の晩餐
5773 2024.10.08 飯田麻友 「簡単じゃないから、宿題にさせて」
5772 2024.10.04 高崎卓馬 名前のない感情
5771 2024.10.03 高崎卓馬 母のひとりごと
  • 年  月から   年  月まで