リレーコラムについて

女が男に敗れる不思議

タカハシマコト

僕が編集長を務めるニュースサイトしらべぇは、その名のとおり「調査」を軸にしたメディア。4万4千人の調査パネルを対象に、毎月数百問のアンケート調査を行い、その中から興味深かった調査結果を記事にしています。

こうした成り立ちのせいか、自分たちが配信した記事についても定期的な調査を行っています。1年間でおよそ1万本、4億ページビューに及ぶ記事の分析です。調査内容はたとえば、「タイトルにどんな言葉が入っていると読まれる/読まれなくなるのか」のようなもの。

ここで問題です。記事のタイトルに、それぞれ「女」「女性」「女子」という言葉が使われていたとき、しらべぇでもっとも多く読まれたのは、どのパターンだと思いますか?

「女」という漢字が使われたタイトル(女性・女子を含む)は、ページビューが平均より54%伸びました。その中でも、「女子」の場合はじつに2.8倍に。ところが、「女性」という言葉を使ったタイトルは、平均値を若干下回ったのです。

これはあくまでしらべぇ読者の傾向ですから、一般論ではありません。ただ、ある程度の傾向が見えてくる母数ではあります。

では次の問題、「男」と「男性」の場合はどうでしょう?

「男」がタイトルに入った記事は86%増、その中でも「男性」の場合は84%増という結果になりました。つまり男の場合は、どちらの表現をされてもほぼ影響がないようです。

ここで気になるのが、「男」と「女」の差。「男(男性含む)」のPV引き上げ効果は86%、「女(女性・女子含む)」の引き上げ効果は54%。「女性を取り上げたニュースのほうが伸びる」と僕もずっと信じていたのですが、タイトルだけにフォーカスすると、実態は逆なのです。不思議ですね。

「女の人を表現するときは、必ず「女子」と書くべきで「女性」は絶対NG」という意味ではありません。それだと、コピーでもタイトルでも、つまらなくなってしまいますよね。しらべぇでもタイトルに「女性」と入った記事は今も多くあります。ただ、知って書くのと知らないで書くのは、異なる結果につながるでしょう。

AIがコピーを書き始めた時代、データを謙虚に活かしつつも人間ならではの想像力を働かせる。楽しめる人には、すごく面白い世の中になってきたと感じます。

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5673 2024.03.18 小山佳奈 コピーライター思考。
5672 2024.03.14 小山佳奈 覚えていたい。
5671 2024.03.11 上田浩和 広告の仕事ってやっぱり。
5670 2024.03.05 上田浩和 CMプランナーという人たちは。
5669 2024.02.20 佐藤雄介 上田さんについて
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