リレーコラムについて

試されるゴールデンウィーク

廣畑聡

ゴールデンウィークの日曜日。

めずらしく僕は、一人で二子玉川まで買い物に来ていた。

一人でお昼を食べ、一人で買い物を楽しみ、
滅多にない一人の時間を楽しんでいた。

15時すぎだろうか、妻から電話が入った。

化粧水なんかも買いたいので、上の子の習い事終わりで、
2人の子どもを連れて、二子玉川に合流するという。

そして、「晩ご飯はいつもの美登利寿司に行こう」
と妻は言った。

美登利寿司は子どもたちのフェイバリット店No.1であり、
その時は僕も、何も考えずに「オッケー」と言った。

玉川高島屋にあるその店は、ある程度安い上に美味しいため、
いつも行列ができる、ある意味有名店である。

16時から整理券が取れるシステムなのだが、
子どもが急に嫌がったりして来ないパターンもありえるので、
家族が来る事が確定した16時半前、僕は美登利寿司の整理券を取った。

普段の土日なら、16時半に整理券が取れれば
だいたい18時すぎには店に入ることができる。

ただその日は、ゴールデンウィークの日曜日。

整理券を取った時点で、なんと90組待っていた。

一組平均を甘めに3人と計算しても、すでに270人待っている。

これはイカンということで、
すぐさま妻に伝え、子どもに伝え、プラン変更を申し入れた。

「このままだと、食べるのは相当遅くなる」
「待ってられないだろうから、○○とか××はどうか」
「駒沢にもお寿司が食べれるいいお店ができたんだよ」

といった具合に提案したのだが、
いちばんこだわりの強い上の娘は、一貫して主張を曲げなかった。

買い物したり遊ばせたりしながら、18時まで待った。
まだその時点で70組待っていた。

これはイカンということで、
すぐさま妻に伝え、子どもに伝え、本気の説得に入った。

「このままだと、食べられないと思う」
「駒沢のお店は空いている。お寿司だって食べられる」

それでも娘は曲げなかった。息子はおもちゃ売り場で遊んでいた。

これは本気でやばいが、妻も待つと言うので仕方なく、
19時ごろいったん地下に降り、御座候で赤あんを一個ずつ買って食べて飢えをしのいだ。おなかが空いていた家族全員、少し食べたことで、少し元気が出た。
いま考えれば、それも間違いだったのだが。

それから待つ間も、僕はプレゼンを繰り返した。

20時ちょっと前だっただろうか、
ついに娘から「駒沢の店にズワイガニの握りがあれば、そこでも構わない」
という言質を取った。ズワイガニは、娘のフェイバリット握りNo.1である。

「そ、そちらでズワイガニの握りはやってますか!?」
僕は急いで電話した。

がしかし、この季節はやってないという。
そりゃそうだ、ちゃんとした店だ。冷凍ズワイガニなど置いていない。

そして20時ごろ。整理券を取ってから3時間半たった訳だが、
それでもまだ、なんと28組待っていた。

一組計算を甘めに3人としても、まだ84人待っている。

これはイカンということで、
考えつく限りの別案を繰り返し妻に伝え、子どもに伝えた。

さすがにフラフラになっていた上の娘は、
なんとついに「牛角」で折れた。
家のそばにある、娘フェイバリット店No.2である。

やった!!これで何か食べられる!!
帰って普通の時間に子どもたちを寝かせられる!!
そう思った。

がしかし、ここで妻が、驚愕の答えを出した。

「牛角は飽きた。○○とか××の焼き肉ならいいけど」

おおお〜。そ、そうかそうか。

ではすぐさま電話しよう。電話した。
がしかし、その日はゴールデンウィークの日曜日。満席だった。

ここに来てようやくクライアントの社長がOKした牛角に、
なんと、会長がNGを出したのである。

どうしよう。さすがにもうアイデアがない。
すでに全員疲弊しきって、頭も回っていない。

牛角のくだりを話しながら、いったん高島屋の外に出て
帰りのバスを待つところまで行っていたのだが、
「もうここまで来たら待つしかないんじゃない?」ということになり、
結局また、美登利寿司に戻ることになったのだった。

そこからはもう、皆、無言だった。

他のみなさんもしびれを切らしたのだろう。
キャンセルも相次ぎ、トントン拍子に順番が進んだものの、
なんとか店に入れたのは、21時前。

整理券を取ってから、約4時間半がたっていた。

改めて僕は、家庭よりも仕事の方が楽だという事を知ったのだった。

以上、試されるゴールデンウィークのお話でした。

さて、最後だけやたらと長くなってしまいましたが、
さぼりにさぼってしまったリレーコラム、
来週からは、会社の後輩であり、
駒沢住人の後輩でもある村山覚くんにバトンを渡したいと思います。

一週間、どうもありがとうございました。
村山くん、無茶ぶり引き受けてくれてありがとう!
爆笑リレーコラム、たのんます!

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