リレーコラムについて

「アダルトビデオ」の覚悟について

鶴香奈子

「なぜそんなに下ネタが好きなんですか?」
という質問をよくされます。

ただ、私「下ネタ」って実はあまり好きじゃないんです。
ほんとです。
私が好きなのは下ネタではなくて、「性的なテーマ」なんです。
もっというと、「性に関する物語」です。

下ネタって、なんていうかネタなんて時点で
芸人でもないくせにたかが一般人風情が使うのもおこがましいフレーズだと思っています。
私が、性的な雑談を「ネタ」までに昇華させたことって
これまでの人生でたぶん一度もないと思います。
それくらい、みなさんが「下ネタ」とお呼びになるものに対して、畏怖の念を抱いています。

たとえば私が日頃疑問に思っている性的なテーマを例に挙げますと、
食に関する話ってみなさん普通にしますよね。
なにが好きとかどこの店がいいとか自分がうまいとかへたとか。
これって性に関する話でもそのまま置き換えられませんか。
なにが好きとかどこの店がいいとか自分がうまいとかへたとか。
もとを正せば「食欲」の話か「性欲」の話かくらいの違いでしかなく、
そもそも私は高校時代くらいからでしょうか、
食欲と性欲の世間での扱われ方の違いをとても興味深く思っていました。
その後、藤子・F・不二雄先生の「気楽に殺ろうよ」という短編作品を読み、
大変感銘を受けたことを覚えています。
この作品は、世間での「食欲」と「性欲」の扱われ方が逆転している世界を描いています。
読んだことがない方は、ぜひ読んでみてください。おすすめです。

話は少しそれますが、先日仕事終わりに5人くらいで飲んでいたとき、
「いまから5人でごはんを食べよう、と言ってもみんな驚かないけど、
 いまから5人でセックスしようよ、と言ったら驚くこの違いって面白いよね」
と言ったらその話自体に驚かれてしまいました。
別に私は乱交趣味も経験もありませんが、そのことは特段問題ではなく、
このテーマが驚かれてしまうほど常識や理性や通念で凝り固められてきたのが
人間社会、すなわち文明なのです。

「アダルトビデオ」というのもそうですね。
一般にアダルトビデオは「男性が観るもの」
(※近年、女性向けと称したAVも企画されてはいますが、個人的には従来のAVのほうが好きです)
とされていて、女性がAVの話をすると「AVとか観るんですか?」という
男性の場合まず聞かれない質問が挟み込まれます。
いわば「あなたはどういうジャンルが好きですか?」みたいなQ1ではなく
Q0のそもそも論の質問をされがちです。
でもAVとは、その名の通り「アダルトビデオ」です。
「メンズビデオ」ではないのです。
このネーミングだけで定義すると、
中学生が友人同士で堂々と貸し借りしあっていることをこそ驚くべきであって、
大のオトナの女性がリラックスタイムに鑑賞していたとていちいち驚くことではないのです。
ただ先程も述べましたとおり、文明社会において、
表向きは「メンズビデオ」になってしまっていて、
女性がレンタルビデオ屋のアダルトコーナーに入りづらい世の中となっているのが現状です。
(余談ですが最新AVのタイトルは世間の流行をいち早くとらえるために大変役立つと思います)

この文明社会において「メンズビデオ」ではなく
「アダルトビデオ」というネーミングがなされたことは
これまで人類が培ってきたコモンセンスに対する宣戦布告だったのです。

NO
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