リレーコラムについて

僕たちの永久機関

秋田勇人

高校のとき、生物部に所属していた。
部員は僕と、同級生の悪友二人だけ。
部室にたまって漫画を読んだり、
いらない雑誌を隣の地質部にブン投げて
地質部のヤツを怒らせるのが主な活動で、
簡単にいうとただの溜まり場。

そんな僕たちの唯一生物部らしき活動が亀の飼育だった。
ミシシッピーアカミミガメという、
日本の侵略的外来種ワースト100にも認定されている
最も飼育するに値しない亀を飼育していた。

ほとんど世話のいらない亀だが、
週に 1回くらいポンプで水を吸い出して水槽を空にし、
蛇口から新しい水を補給する、水の交換が必要だった。
なんてことのない作業だが、ある日、技術革新が起こる。

蛇口から注ぐ水量を、
ポンプから排出する水量と同じに調整すると、
水の自動循環システムができあがったのだ。
こうして常に水を循環させておけば、
週一の水の交換は必要なくなり、
亀は永久に新鮮な水で暮らすことができる。
まさに、永久機関だ。

発明の興奮に沸いたのは束の間、
あまりに静かに稼働する機関のことを
僕らはすっかり忘れてしまった。
そして、機関を稼働させたまま、
つまり水道から水を注ぎっぱなしで家に帰った。

翌日、僕たち二人は校内放送で職員室に呼び出された。
生物部からあふれ出した水が、
真下にあった学校の資料室に流れ込み、
歴代の卒業文集から、
初代校長直筆の掛け軸まで水浸しとのこと。
完璧なはずの機関が、暴走したのだ。

その後、資料室の掃除をしたのはもちろんのこと、
始末書や反省文を山のように書いた。
だがそんなことより僕たちは、
機関がなぜ暴走したかに興味があった。

部室に戻り、ポンプを見て気付いた。
水槽の底に敷いてある砂利がポンプの穴に
少しずつつまっていき、排水量が低下。
蛇口からの注水だけが行われ、
水が水槽から床へあふれ出したようだ。

もう二度とこの機関は使いません。
当然反省文ではそう宣言したのだが、僕たちは挑戦した。
技術革新に、失敗はつきもの。
原因が分かったいま、怖いものはない。
ポンプを高めの位置に固定すれば、大丈夫なはずだ。
永久機関は再稼働した。

今度こそ機関は、順調に稼働している。
そして順調過ぎてやはり、僕たちはそれを忘れて帰ってしまった。
そう、反省すべきはポンプの砂利がどうこうではなく、
僕たちの忘れっぽさだったのだ。

前回から一月しか経っていない事故再発によって、
僕たちは顧問の信頼と部室の鍵を失った。
掛け軸を二回も濡らされた初代校長が化けて出たりしなかったのが、
不幸中の幸いだった。

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