リレーコラムについて

最高の獲セル

秋田勇人

獲得的セルフハンディキャッピングという
言葉をご存じだろうか。

カンタンに言うと
「テスト前に部屋の掃除をはじめる」ような行動のこと。
大きな課題に直面した時に、
あらかじめ失敗したときの言い訳をつくる行動を
獲得的セルフハンディキャッピングと呼ぶのだ。
(長いので以下、獲セル。)
これが僕はいまだにやめられない。

すぐに取り組まなくてはいけない企画があるときほど、
飲んでいるペットボトルの成分表を読み込んだり、
椅子の高さを入念に調整したり、
ウォンバットがモフモフされる動画をひたすら見たり、
無駄な時間を過ごしてしまうのである。

小さな破滅願望ともいえる獲セルだが、
僕の中で明確な良し悪しがある。
スマホゲームみたいに長く熱中してしまうものは、
本当に破滅してしまうのでダメ。
逆に机の上の整理などカンタンすぎる行為は
背徳感が得られないのでダメ、といった具合だ。

そんな僕が選ぶ、
最も良い獲セルが「出汁をとる」ことである。
自宅限定になってしまうが、
「ヤバいときほど出汁をとれ」なのだ。

昆布を水につけるとか、
鶏ガラと香味野菜を鍋に入れるとか、
出汁をとるための準備に時間はかからない。
そして、火にかけてはじめたら、
あとは待つだけ。

そう。出汁は、無駄なことしたい破滅願望を小さく叶えつつ、
「待ち時間に企画でもするか」という前向きな態度を
自然にもたらす、理想の獲セルなのである。

しかも、出汁をとり終えたら
美味しいスープまで仕上がっているというわけだ。
一石二鳥とはまさにこのこと。

同じ症状をお持ちの方がいたら、
是非お試しください。

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