リレーコラムについて

業界人の電話

井田万樹子

年末、中川君にスタジオで会った。
中川君は、会社時代の後輩である。
通りすがりに、「井田さん、正月明けにリレーコラム書いてくださいよ」と言われた。
正月明け、お盆明け…こういうのが1番困るのである。
「…な、なな、なに、それ?」
一瞬でごまかしたつもりだったが、翌日、電話がかかってきた。

「あー中川です」
「あ、ど、どーも」
「あのー、井田さん、あのね」
「…と、東京コピーライターズクラブの件でしょ…」
「あれ?なんで、わかったんすか?」
「ごめん、無理」
「いや、お願いしっすよ〜」
「正月明け、キビシい」
「正月に書けばいいじゃないすか」
「年末は大掃除して、お節料理つくらなあかんもん。お正月は両家の実家に帰って
 掃除の手伝いもあるし…それと、それと」
我が家は古風な年末年始を送っているのだ。
「わかってっす、わかってっす〜 
 あ、クライアントから電話かかってきたんで、また、かけなおしまっすプープープー」

業界人っぽかった。
喋り方も、電話の切り方も。
…中川君、すっかり大人になったんだなぁと思った。

数分後。また中川君からだった。
居留守をつかった。
その数分後。また電話。
「あぁ井田さん?さっき、もしかして携帯、無視しました?」
「い、いや…ちょっと電話とれなくて…」
「またまたまたぁ〜。1月6日からコラムスタートなんすよ」
「次の週にしてよぉ〜次やったら書くから」
「いや、無理っす、あ、あの、右まがってください」
「え?」
「そこ、ちがいます」
「え?なに?」
「あ、すんません、今、タクシーなんで」
「タ、タクシー…」
「じゃ、1月1日に僕がバトン渡しますんで、あ、左です、そこ、そこ、そのビルのとこです」
「バトン?左?…そこ、そこ??」
私の頭に?マークがいっぱい浮かんでいるところに、中川君は絶叫した。
「あぁぁー!」
「なに?」
「今日中にやらなあかんこと忘れてた!しまったー!
 うわー12時までにメールするって言ってたのになー」
「え?何?」
「ちょっと、井田さん、もう切っていいすか?」
「あ……じゃあ…えっと…」
「あ〜もう〜最悪や!うわ〜どうしよ、やばっ!あ、おい、ちょっと、
 左じゃなくて右ですよ!右に曲がって!まっすぐ!あ〜もう、まっすぐって言うてるのに!
 遅刻や!井田、おまえ、このクソ忙しいときに電話してくんなよ!ボケ!プープー」

…いやー。
びっくりしました。すごいなぁ…中川君。

すみません。
半分くらい嘘です。

いや75%くらい嘘です。300%くらい脚色してます。
リレーコラムを私にまわしてくれたお礼に、あることないこと書いてしまった。
ごめんね、中川君。あ、ちなみに中川君は広告界きってのイケメン高学歴コピーライターです。
ね?これで許してね。 よい一年になりますように。

NO
年月日
名前
4523 2018.08.10 鈴木拓磨 TOKYO 2100
4522 2018.08.09 鈴木拓磨 書き出し小説
4521 2018.08.08 鈴木拓磨 息子が黙ってない
4520 2018.08.07 鈴木拓磨 父がボディビルダー
4519 2018.08.06 鈴木拓磨 日本コピーライターズクラブ
  • 年  月から   年  月まで