リレーコラムについて

おサルさんの思い出。その1

武藤雄一

「お前は全然、プロじゃない」
僕が弟子だったころ、何かあるたびに師匠に言われた言葉です。

広告代理店でコピーライターの仕事をしていたとき、
コピー以外の仕事も多く(今考えると、どれも大切なことだったんですけど)
なんか、このままだとコピーとちゃんと向き合わないで終わってしまうんじゃないか。
なんて勝手に思い込んで、テレビのドキュメントで観た
漆塗り職人の師弟関係のような超、ストイックな世界に憧れてしまって
「俺は、やっぱり一流のコピーライターになりたい」
「そのためには、誰か有名な先生の弟子になるんだ!」
と、帰りの電車の横須賀線の中で、おサルさんのように短略的に決意し、
なんとか入れてもらった巨匠コピーライターの事務所でした。

はじめ、師匠はとってもやさしく僕の広告の夢をたくさん聞いてくれて、
いつもお酒を飲みながら「その夢を全部かなえればいい」とニコニコ
とうなずいてくれて、
「俺はなんて、恵まれてるんだ!俺がずっと広告について考えていた
ことは間違ってなかった!!」と、体中に血液がたぎるのを感じました。

が、しかし。
3ヶ月を過ぎたころ、師匠が笑いながら「今日からお客様状態はやめる」
と、言ったのです。訳が分からず「はい」と元気よく僕はこたえました。
すると師匠は「お前はまだ、プロじゃないから」と。

プロじゃない!
プロじゃないって、どういうことだよ。
意味、わかんない。

頭の中が、その言葉でいっぱいになっていました。
この日から、僕の暗黒時代の始まりです。

おサルさんの思い出。その2へ続きます。

NO
年月日
名前
5074 2021.02.05 三浦麻衣 地球の見方
5073 2021.02.04 三浦麻衣 ことばのテトリス
5072 2021.02.03 三浦麻衣 作品がまだない作品展
5071 2021.02.02 三浦麻衣 ことばの生け花
5070 2021.02.01 三浦麻衣 ことばの世界旅行
  • 年  月から   年  月まで