リレーコラムについて

お散歩人生(犬編)3

小林弘昌

お散歩人生(犬編)3                                                              

犬の散歩って、とても使い勝手のいい行動でもあるのです。真夜中だろうが、夜明けだろうが、犬を連れて歩いているだけで、不審に思われたり、少なくとも尋問されたりすることはない。建築とかが好きな私は、面白い家があったりすると立ち止まってじっと見たり、ぐるっと回ったりしているが、犬が一緒だと、その家の人が出てきても、ああ散歩か と納得して変な目で見られる事がない。花が咲いてるうちの庭をじっくりと見る事もできる。小さな路地に入る事もできるし、犬のせいにして私道に入ったりもできる。さらにいえば、駅の人通りのある方で、思わず若くてきれいな女の人に見とれてたりもできる。すると、犬がその人にしっぽを振ったりして、あらま、みたいに近づいて頭をなでたりしてくれることもあるんだな。僕の微妙な心(露骨な心??)に犬は感づいて、そういう女の人のほうに行ってくれるのかもしれない。家の犬はメスだから、僕のために気を利かしてくれてるのかもね。                                                          

でも逆に考えると、町でじーっと立ち止まるためにはなにか理由が必要になる、ということ。ただ、ぼーっと道の真ん中で立ち止まっていると、たちまち不審者になるってことではある。とくに、夜の散歩なんて、12時近くに行く事もあるけど、そんな夜中にひとりで公園をうろうろしてたら、絶対、通報されるでしょうね。犬といっしょだと、ほほえましい感じになるけど、犬がいないとたちまち、犯罪の臭いになってしまう。                                                           

調子こいて夜の六本木を犬と散歩したこともあった。けっこう女の人が寄ってきて人気者になったし、おかまちゃんがすごい勢いでかわいがってくれたりもしたが、なんか犬はとまどいをかくせないかんじだったので、一回だけにした。                                      

家の回りで、活動範囲をグンと広げる時はいつも犬がいっしょだ。春の隅田公園の夜桜を見に行ったり、上野公園の新緑を見に行ったり、東京スカイツリーまで、家からどのくらいあるか、歩いてみたり。結構周辺を歩き回ってる。下町を歩き回る事にむりやり犬を付き合わせているのかもしれない。「ほら、散歩行ってやるぞ」みたいな態度で、犬を連れ出すものの実は、自分がそこに行きたいだけだったりする。                                                                

なんだかんだ言ってもこの十年、隅田川沿いの東京の変化してゆく姿を、肌に感じることができたのも散歩のおかげだろう。ほんとに、不況だ、不況だとかいいながらも、この辺の下町の風景はこの十年で開発されて、大きく変わった。マンション開発や商業施設、公園整備、川沿いの整備など、10年前とは全然違う町の姿になったのは間違いない。とにかく、外を見て歩く口実には、犬の散歩ほどいいものはない。それは確かだ。

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