リレーコラムについて

おかめそば

渡辺潤平

おかめそばが好きです。

おかめそば、食べたことありますか?
お店によって具はまちまちなのですが、
かまぼこ、伊達巻き(あるいは卵焼き)、麩、たけのこ、
ほうれん草、なると、椎茸、筍、湯葉などが、
温かいおそばの上に賑々しくひしめきあう、
地味だけど夢のあるおそばです。
ちなみに卵とじにすると、おかめとじです。

子供の頃、おばあちゃんと入ったそば屋で初めて出逢ってから、
かれこれ30年近く、おかめそばの魅力に取り憑かれています。

そば屋に入って、おかめそばを頼む人を
自分以外に見た記憶がありません。
つまり、世間におけるおかめそばの発注数は、おそらく、
天ぷらそばの10分の1にも満たないのではないかと思われます。
それゆえ、おかめそばには、そば屋の真のアティテュードが
現れるように思えて仕方ないのです。

具の構成はどうか。
ボリュームはどうか。
そばのゆで加減は万全か。
だしはちゃんと利いているか。

そんなことを仔細に確かめながら、黙々と箸を進めます。
はたして、どの具から手をつけるのか。
小さいようで、じつは重要な問題です。
僕は、まず最初にかまぼこを食べるのが好きです。
そば屋で一杯飲むときに、まず板わさを頼む、あの感覚です。
ですが、このフォーメーションは、
練り物が二枚以上存在している場合に限ります。
一枚しかない練り物を、最初に食べてしまったあとの
喪失感に苛まれるのが嫌だからです。

以降、野菜を黙々と食べるステージをクリアし、
仕上げの麩、大団円の伊達巻へと一気に突っ走ります。
具の数が多い分、そばはちょっとセーブしながら食べると
最後までいいバランスで食べられることが多いです。

ところで、おかめそばはなぜ、おかめそばと呼ばれるのか?
諸説あるようですが、
盛りつけられたさまが「おかめ」に似ているから、というものと、
将棋は対局者よりも脇で見ている人の方が冷静な目で局面を
見ることができるという意味の言葉「岡目八目(おかめはちもく)」
から、五目よりも具の多い八目という意も込めて名づけられた、
というのが有力な説であるようです。面白いですね。

僕が人生で食べた中で一番おいしかったのは、
今のところ、浅草の並木薮蕎麦のおかめそばです。
香り豊かなだしと、つややかなそばの調和。
ちょっと不安になるぐらい、素っ気ない具の構成。
凛とした店内でいただくその味わいは、
おかめそば道の神髄といえるものでした。

昨日は、四谷三丁目の交差点にあるおそば屋さんで、
おかめそばをいただきました。
昆布だしがしっかり利いたのと、
かまぼこ二枚になるとが一枚という練り物重視な
具の構成が、非常に僕好みでした。

ごちそうさまでした。

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