リレーコラムについて

「下品」「最悪」「1ミリもおもしろくない」上等!

笠井剛

さてさて、本リレーコラムも3晩目とあいなりまして、
ますますエンジンがかかってまいりました。
そもそも「3」という数字は、とても頃合いのいい数字です。

毛利元就の「3」本の矢、
井上「3」太、
さわやか「3」組 にはじまり、
コンペ資料のなかでクライアントのオリエン内容を
振り返るときに絞り込むポイントの数も「3」、
いい企画がまったく思い浮かばないときに
とりあえずあつまってブレストしたい人数も「3」、
それでもここぞという着地点が見つからなかったときに
「えーい、ままよ」とプレゼンする企画の数も「3」、
「私たちもいい歳だけど、もう一人くらいいてもいいかもね」
という検討に値する子どもの人数も「3」、
「いままで何人とつき合ったことある?」
と聞かれてカドの立たない数字も「3」と、
「3」という数字の魔力に、誰しも魅入られた経験があるかと思います。

そんないい頃合いである本リレーコラムに、
各方面からレスポンスをいただいておりまして、
曰く、「下品」「最悪」「1ミリもおもしろくない」など、
主に3つに集約されるご意見が多く寄せられております。

ありがとうございます。

なぜここで謝意を述べるのかと申しますと、
ポジにしろネガにしろ、
「反応がある」ということはすばらしいことだと思うからです。

いちばん良くないことは、
「毒にも薬にもならないこと」だと思うのです。

「周囲に何の反応も及ぼさない」ということは、
「それは何も存在しなかった」ということと同義です。
あまりにもそれはさみしい。

昼と夜、男と女、プラスとマイナス。
この世のすべては背反する2つの要素の集合体であるならば、
人類史は毒と薬の歴史です。

さしずめ、いまは薬の世紀でしょうか。
消毒・漂白されたものがよしとされ、
代わりに海や空気が汚れてきたら、あわててそれを中和する。
抗菌万歳! サステナビリティー万歳!

でもそこには、リアリティーがありません。
僕が転職してリクルートの求人広告の制作になった理由も、そこにありました。

その広告を見て何人がエントリーし、何人が選考に進み、何人が内定し、
何人が入社し、何人がその後に活躍しているか。
彼らはどんな人物像か。お客さんはその結果に喜んでいるのか、怒っているのか。
使える予算は少ないし、世の中へのインパクトも限定的ではありますが、
自分のアウトプットが確実に人を動かし、定量も定性も、
これでもかというくらいすべてがありのままに反応として返ってきます。
担当して「この会社はすばらしい!」と思えた会社にいい人材が集まれば、
「ひょっとして日本はこれからちょっと良くなるんじゃないか?」と本気で思えたり、
人事が会社の顔として外に出すいろいろな業界のエース人材を取材すれば、
テレビや新聞だけでは決して知ることのできない世の中のしくみが、
まるでジグソーパズルのようにひとつずつ浮かび上がってきたりします。

大きすぎない、限定的な市場の広告だからこそ、ダイレクトな反応がある。
ダイレクトな反応があるからこそ、毒も薬も、清濁あわせ呑んで仕事に臨む覚悟が要る。
その連鎖の先に、ちょっとうれしいことがある。
それらのすべてが、リアリティーとして自分の心に刻まれる。

今日、たくさんの仕事を抱え込んだ1年目の女の子が、
「他人に仕事をどうお願いすればいいのか分からない」と泣いていました。

今日、たくさんの実績を残して今月末に卒業する大先輩が、
「つぎに行く代理店はもっときびしい。でもがんばる」と笑っていました。

僕はそのあいだで、右往左往していました。

純粋すぎる存在と、達観できた存在。
僕はそのあいだにいる、第3の存在。
彼女を彼に近づけるために、何をすればいいのだろう?
いったいどんなコミュニケーションが、最適解なのだろう?

こんな風にいろいろ考えていくことって、まさに広告的ですよね。
なかなかひとことのコピーで、ズバっとお悩み解決はむずかしいですが。
でも僕は、2者間のギャップを埋める第3の存在でありつづけたいと思います。
不安定なところに最後に登場し、おいしいところをかっさらう、「3」。
最高じゃないですか。

僕らは、清濁あわせ呑む器量をもった世の中を取り戻さなければならない。
そのためには、まず僕らが清濁をあわせ呑まなければならない。

そんなことを思った3晩目でした。

NO
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