リレーコラムについて

石鹸ブーム!

小野仁士

日々、添加物にまみれて生きてるせいか、
無添加という言葉に弱いです。
スーパーへ買い出しに行くたび、食品パッケージの裏に書いてある
成分をチェックせずにはいられません。そしてつぶやきます。
「ミートボールよ、オマエも増粘多糖類か」と。
でも結局は買います。そういうものです。

無添加と聞いて思いつくのは食べ物だけではありません。
毎日の生活に欠かせない石鹸やシャンプーもそのひとつ。
ということで、ある日、石鹸ブームがやってきました。

石鹸づくりは、それほどむずかしくありません。
基本は、油と水酸化ナトリウムを混ぜるだけ。
作ってみよう!という方は、ネットで「手作り石鹸」と
検索すればいろいろ出てきます。

必要な材料をメモって、いざ買い出し。
旅行と一緒で、実行前にあれやこれやと準備してるときが
いちばん楽しいかもしれません。
頭の中は、石鹸のことだらけで泡立ってます。

まず水酸化ナトリウムを買いに薬局へ。
別名は「苛性ソーダ」。ソーダ=爽やかというイメージのせいか
そんなに威力は感じませんが、れっきとした劇薬。
毒物及び劇物取締法で指定された劇物です。
ハンコと身分証明がないと買えません。
水と激しく反応しますし、タンパク質もトロトロに溶かします。

つぎは、油や匂い付けの精油を手に入れるため
上野のアメ横へ遠征。いちばんの目的は
オリーブオイル100%石鹸作りなのですが、ほかにもパーム油や
ココナッツ油、つばき油などを購入。あと、硬い石鹸に仕上げる
ココアバターや保湿力を出すグリセリンも一緒に。

家に戻って、いよいよ本番。
本命のオリーブオイルからいきます。水酸化ナトリウムを
精製水で溶かし、温めたオリーブオイルを加えて混ぜます。
オリーブオイル100%の場合は、ここからが大変。

ココアバターやグリセリンなど他のものを加えると
不純物が多いため油が固まる(=鹸化する)のも早いのですが、
油100%場合、混ぜても混ぜてもなかなか固まりません。
このためだけに買った電動泡立て器が、油の入ったボウルの中で
むなしく回転をつづけます。
固まる気配、まったくなし。でもここで手を抜くと
いい石鹸ができないみたいだし。と思いつつ、しばし休憩。

最初にオイル100%石鹸という
高難度モノを選んだのがマズかったかなと反省し、
パームオイル+ココアバター+グリセリンで仕切り直そう。
と、ふと放置したボウルを見ると、鹸化が進んでる!

固まる前に、もっとしっかり混ぜたかったのに。
ちゃんと石鹸になるのかと不安を持ちつつ
上半分を切り取った牛乳パックに半凝固した
オリーブオイルを押し込み、石鹸のカタチをつくる。

この状態で何週間か乾燥させると完成のはずですが、
1カ月たっても2カ月たっても、半ナマ。おかしい。
いわゆる石鹸の硬さになってくれません。
一度、チャレンジでその状態の石鹸を風呂で使ってみたら、
全身油まみれに。臭すぎ。

とかなんとかやってるうちに、気持ちのバブルがはじけました。
石鹸が完成できなかったことを惜しみつつも、
つぎのブームとの出会いを求めて新たな旅へ出発です。
その後、オリーブオイルはふだんの調理で使いましたが、
パーム油、ココナッツ油、つばき油は、封も開けてません。
電動泡立て器も、それが必要な料理をすることがありません。
大量の水酸化ナトリウムも、気軽に捨てるに捨てられません。
台所の奥で眠っています。

ono.tcc.column@gmail.com

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