リレーコラムについて

ある少女は、言いました。

佐々木望

数年前、渋谷区営プールでのこと。

水着に着がえようと更衣室に入ったら、
きちんとした身なりの30代後半の父と
4歳ぐらいの娘がいました。

本来は、もちろん男性用と女性用は別ですけど、
子どもは、べつにどっちでもいい感じでした。

その娘(父は、ユキと呼んでいました)は、
パパのいうことも聞かずに、
パンツ1枚で、更衣室の中を駆けまわったり、
体重計の上で飛び跳ねたり。

とりあえず着がえ終わった父は、
そんなユキに、いい加減、着がえるように促し、
彼女も、ひと通り遊んで、そろそろ着がえモードに
差しかかったときでした。

プールへとつづく自動ドアが開いて、
泳ぎおえた北欧系の男性
(ステファン・エドバーグ似。古いですけど。)が
水をしたたらせながら戻ってきて、
ユキのとなりのロッカーを開けました。

ユキは、左どなりに立つ、背の高いエドバーグに
興味があるらしく、かなりの角度で見上げていました。

そしてそのとき、エドバーグは、
右下からの視線など気にする雰囲気もなく、
Arenaのブーメラン水着をザザっと降ろしたのです。

そうです。北欧のご子息がご開帳です。

それはもう、センチではなくインチで表現すべきではないか、
というスケール感で、まるで風に揺れるコスモスのよう。

ユキは、やはり、見てしまいました。
しっかり見上げていたのだから当たりまえです。

僕の記憶がまちがっていなければ、
彼女は、眉間にシワを寄せて凝視していたと思います。

彼女にとって、それは新キャラクターの登場ですから、
シワぐらい寄せてしまうのもいたしかたありません。

そして、娘の脱ぎちらかしたものを拾ったり、
自分の荷物を整理したりで、
この状況を把握していない父に向かって、
ユキは、小さいながらもはっきりといいました。

「パパ、マイクがおっきいよ。」

家庭というのは、ひとつの治外法権なのだなと。

そういえば僕の娘は、今週の金曜日で9ヶ月になります。

NO
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