リレーコラムについて

広告とバンド、どっちが大事なんだ?

嵐田光

「おまえは、広告とバンド、どっちが大事なんだ?」
それは僕が若手の頃、飲み会の席で、先輩に言われた言葉でした。

僕も、空気を読んで「広告です!」って答えればいいものを、
音楽やバンドのことになると、強情になってしまうところがあり、
踏み絵を踏むことはできず、「どっちも大事です!」って答えたんです。

すると先輩は、僕に言いました。
「オレは、広告に人生をかけている。
だから、おまえみたいな中途半端な想いのやつには、仕事を頼めない。」

ずしーーーーん。
なんて重い言葉・・・これは、さすがに落ちこみましたよね。

でも、先輩!
広告とバンドって、二者択一なんですか?
カレーとラーメン、どっちも好きじゃダメなんですか!?

いや、先輩からしたら、ダメなんですよね・・・
好きだったら、365日、カレーを食べろ!寝てもさめても、カレー!カレー!カレー!
どっちも好きだったら、食べられる回数が半分になるだろ!!週8で、カレーだ!!ラーメンなんて認めん!!
ってことなんですよね・・・

ただ、僕は本心で、広告制作もバンド活動も、どっちも好きだし、大事だし、全力なんです!
だけど、それは僕の中の理屈であって、他の人には理解されないんだなと知り、
それ以来、僕は自分からバンドをやっていると言わない、隠れキリシタンになりました。

しかし、それから時は流れ、世は「働き方改革」の時代に!
副業を解禁する企業も増えてきて・・・
なんだか、世の中の風向きが、変わってきたぞ?
これは、もうそろそろ、バンドやってるって、堂々と言っても処罰されない時代?

「じ、じ、じつは僕、ずっとバンドやってるんです!!」
こうして、僕は会社でも公認の、週末バンドマンになりました。
そして、嵐田と言えば「音楽に詳しいやつ」みたいなイメージが定着して、仕事をもらうことも増えて。
結果的に、あの時、二者択一に迫られて、バンドを辞めなくて、ほんとよかったなと今では思います。

とは言え、平日に、広告の仕事をしながら、週末に年間40本ライブをする生活は、正直、しんどい時も・・・
でも!そんな時は、あの日の先輩の言葉を思い出すのです。
「おまえは、広告とバンド、どっちが大事なんだ?」
そして、自分に言い聞かせます。「どっちも大事なら、文句を言うな!」
今の自分があるのは、あの先輩の言葉のおかげかもしれません。

先輩、ありがとうございます!
ぜったい、言ったこと覚えてないと思うけど。

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