リレーコラムについて

小僧の頃の話

サン・アド人

入社して約半年間は、野放しだった。
野放しと言うより無視に近かった。
自分はまわりから嫌われているのかと思ったほど。
でも、それも当たり前の話で、
ぽっと出の小僧に、いきなり大きなクライアントの
仕事が回ってくることなんて絶対にないわけで、
とにかく異常に暇だった。
やることがまるっきりない。
でも、小心者の自分は、
いきなり会社をフケることもできず、
一日中、自分のデスクの椅子を
自分のケツで磨くことくらいが関の山の毎日。
相当にキツかった。
それに、自分の直属の上司みたいな人もつかなかったし、
でかい代理店のように教育担当の先輩なんて、
もちろんいるわけないし。
途方に暮れた。
仕方ないから、会社の膨大な仕事のファイルを眺めた。
それが終わると、今度は、会社にあった蔵書を
片っ端から読んだ。
それも読み終わり、写真集も画集も眺め終わると
いよいよやることがなくなった。
ついに会社をフケて映画を観に行くようになった。
銀座や日比谷や有楽町、六本木ヘ毎日出掛けた。
会社のある場所がそうさせた。
観たい映画がなくなると、
日本の特撮怪獣映画にまで手を出した。
そんな毎日が自分のためになったのかどうかは、
今でも良くわからない。
ただ、サン・アドは、そういう会社だった。

今、サン・アドの展覧会の準備が終わって、
地下のフロアの展示物を
60年代の設立から現在に至るまで順に追いながら、
ぼうっと眺めていたら、
そんな、あの頃のいつかの小僧の気持ちを
急に想い出した。(text / Suckler.Y)

明日4日からサン・アドの展覧会がはじまります。
テーマは「サン・アド人」。
とてもドメスティックなテーマですが、わりと笑えます。
作品と呼ばずに、仕事と呼びたい。
会社を見てもらうというより、人を見て欲しい。
そんな展覧会です。期間は約一ヶ月間、
10月30日までやってます。
場所は、ギンザ・グラフィック・ギャリーです。
良かったら覗いてみてください。

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年月日
名前
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