リレーコラムについて

神楽坂でタクシーに乗る。

植松眞人

住んでいる神楽坂からタクシーに乗ると銀座の事務所まで20分弱。これは近い。電車を乗り継ぐと40分くらいかかるので、寝過ごしてしまったときには、タクシーに飛び乗ることになる。と、いろんな運転手さんがいるんだよねえ。確かに、道も知らない、礼儀も知らないって人も多いんだけど…。
●北海道から出稼ぎにきたある運転手さんの場合。
タクシーに乗った途端に「道が分からないんですが」と言われ、えらいこっちゃ、と思ったのだけれど後の祭り。僕も関西から来たばかりで道なんてほとんど知らないし。でもねえ、一緒に地図を見ながら、いろいろ話してると、いい人なんだよお、この人。もう50代半ばだというのに、北海道から単身赴任。タクシー会社の寮に入って、北海道の家族に仕送りしてるんだっていうのよ。北海道でもタクシードライバーしてたんだけど、景気が最悪で出稼ぎに来たんだそうだ。東京は道がややこしいし、しかも交通量が多くて運転しにくい。昼飯も北海道じゃコンビニの駐車場に車を止めて、ゆっくり食べてたらしいけど、「こっちのコンビニは駐車場ないもんねえ」と苦笑い。東京に来てからはほとんど昼飯が食えないらしい。なんか、話している内にしみじみしてきたんだけど、ふと信号待ちの時に、その運転手さんが言うのよ。「お客さん、今日は空が青いよ〜」って。
●バツイチ皮パンドライバーの場合。
三十代の女性で黒の皮パンをはいて、やたらと格好いいドライバーがいるんですよ。実はこの女性ドライバーのタクシーに偶然にも2回乗りました。なんか、偶然とは言え、この広い東京で二回も乗り合わせるなんて。しかも、二人とも覚えていて、話が弾んじゃいました。なんでも、嘘つきな旦那と別れて、タクシーの運転手になって子供を育てているそうです。これが明るい人でねえ。なんでも、おばあさんが関西人らしくて、トロトロ走ってる車にはクラクション、ぶーぶー鳴らしながら突っ走ってくれるんです。ほんと、気持ちのいい人でした。「たぶん、ばあちゃんの関西人の血が濃いんですよ、アタシ」って、言ってたなあ。名刺もらっとけば良かった。
●ま、僕も出稼ぎみたいなもんなんですよね。ただ、もう帰るところはないけど(泣)。回りを見渡すと同じような境遇の人が多くて、しかもみんな頑張ってるんだよなあ。三十も半ばを過ぎて東京に来て約三年。ここしばらく、ちょっとへこんでたけど、もう大丈夫(何がやねん、という声も聞こえてくるけど)。

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