リレーコラムについて

プロムポーザル

室屋慶輔

どうも室屋です。
いよいよ最終回となりました。
全5回にも及ぶ、壮大なWebページの
デジタル無駄づかいにも終止符が打たれます。

アトランタでの中学校生活も
月日が経ち、室屋少年も
高校に上がります。

日本に一時帰国した時に大量購入した
”世界で一番美味い”と名高いジャパニーズキャンディで
ハスリングするなど、高校でも
確固たるポジションを築いていました。

ちなみに一番人気はシゲキックス。
あの食感と刺激が、メキシカンたちに大人気。

同じ地区なので、高校に入っても
ヒロイン、エマ様は一緒。

お察しの通り、彼女は大人っぽくなり
ますます凛々しく美しくなっていました。

ちなみにアメリカの高校では、
なぜか教科書がタウンページ並みの
大きさ・厚さ・重さなので
教室を移動するたびに
個人用のロッカーで出し入れします。

しかもなぜかハードカバー、
さながらコピー年鑑のよう。
(殴ったら人を殺せるというやつですな)

実は高校になってからは
エマとは、ロッカーが同じ列の上下になり
自然と話す機会が増え、さらに仲良くなっていた。

「ケイスケは、プロムって知ってる?」

教科書の入れ替えをしながら
にこやかに聞いてくるエマ。

アメリカには“プロム”という
卒業学年の最後に開かれる
フォーマルなダンスパーティーがある。

これが、現地の高校生にとっては
学生生活イチ重要なイベント。

男子はタキシード、女子たちはドレスで
さながらレッドカーペット。

会場まではリムジンで移動する豪勢っぷり。

参加は男女のペアであり、男子が女子を誘う。

それは“プロムポーザル”と言われ
字のごとくプロポーズのよう。

地域や学校によって違うようだが、
私が通っていたところでは
ロッカーの内側に、男子から女子への
メッセージが貼られる。

『PROM ? -Keisuke』

といった具合にだ。

『エマなら、ロッカーが
 メッセージで埋まっちゃうんじゃないか?』

と恥ずかしそうに返す室屋少年。

「だといいけど!」

屈託のない笑顔で続けるエマ。

「でも、もしも誰も声かけてくれなかったら
 その時は…ケイスケが救い出してくれるよね?」

エマたん…。

もうこれ、そういうことでしょ。

まいったな。

すぐにでもこの麗しき花嫁と挙式を開こう。
お里のばあちゃん、孫を見るまでご存命かな。

家に帰ってからも興奮が収まらず
そんな風に室屋少年が
妄想をめぐらせていると

ん…でも待てよ、と。

エマは確か…演劇部。

うおー!
あっぶねー。

はいはい。
騙されませんよ、と。

ナチュラルに演技垂れ流しちゃうやつか、と。

これだから女優はコワイわー!とか
絵に描いたような順目のコメントで
一人で盛り上がっていた時、
突然母親が部屋に来て

「お父さん、日本に帰国決まったって。
 福岡帰るわよ」

やりおった!
そらやった!

来年プロムを控えた高校二年生。

もしかしたらエマとパートナーとして
参加できるかも、っていうこのタイミングで!

自暴自棄になりそうだったが、
帰国前にやることができた。

エマに想いを伝えよう。

むしろダメでも、日本とアメリカでは、
気まずさとかジェットラグで
立ち消えるでしょうと。

腹を括った。

逆に気がラクだった。

そして、室屋少年は最終日、
様々な友人たちとのあいさつや送別を終え、
エマを呼び出します。

演劇部の練習後の舞台上。

「どうしたの?」
と困惑しているエマ。

フッとほくそ笑む室屋少年。

そして、熱量をこめた低い声、
静かなトーンでこう言った。

『I know no ways to mince it in love, but directly to say “I love you”』
(愛について語るどんな言葉も知らない。愛していると伝えること以外は。)

演劇部の彼女に贈る、
シェイクスピアの史劇・戯曲のセリフ。

そりゃあ調べましたよ。
暗記しましたよ。ええ。

光の速さでポインターを隅にやって、
このリレーコラムを閉じた人もいるかもしれない。

何を言ってるんだこのジャ○プは、と
思われかねないセリフとシチュエーション。

しかし、静かに届いたのかもしれない。
エマは、しっかりボクの目を見返して、
一言こう言った。

「なに?気でも触れたの?」

と。

凍てつく波動。

この後、冗談じゃなくて
本気で想っていることを必死に弁明したが、
儚く散った事は言うまでもない。

エマ・ワトソン似なだけに
ボクと付き合っちゃったら
リアル美女と野獣になっちゃいますからね。

これ、釣り針大きすぎて
未だにボクの唇に穴開いてませんかね。

そう。

コピーと一緒、
伝え方が大事ということです。

宇宙規模の勘違いと、
間違った伝え方。

自分の中にあることを
気持ち悪がられずに伝えるって
難しいですね。

…。

すいません、全然上手くまとまりませんでした。

さて、
「お巡りさんこの人です。まともな人呼んで」
という声も聞こえてきたところで
気持ちを切り替えて、
バトンを渡す次の方をご紹介したいと思います。

【POOL inc.の竹田芳幸さん】です。

先日トークイベントでご一緒させていただいた
ご縁で、次のランナーをお願いしたいと思います。

竹田さんの前職の上司が、
私の営業時代の上司という数奇なつながりもあり、
勝手に親近感を覚えています。

何より彼もサッカーフリークで
「好きな2トップは?」という議題に対して
アーセナルが無敗優勝した時の
2トップ(アンリ・ベルカンプ)を挙げてくるあたり、
さすがとしか言いようがありません。

しかもグッドルッキングガイですよね。
う・ら・や・ま・し・い。

ちなみにアトランタの友人に聞いたところ
エマはその後、同じ演劇部の
これまたグッドルッキングガイと
付き合ったそうな。

でっすよねー。
順目すぎる。

それでは皆様本当にありがとうございました。
毎度長文、失礼いたしました。
引き続きコピーライターとして精進します。

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