リレーコラムについて

五感

秋田勇人

ドイツで開催される世界最大のヘヴィメタルフェス、
Wacken Open Airに参戦してきた。
高校の頃から、いつか行きたいねと友人たちと話していたのだが、
ちょっとお金に余裕ができた去年の夏、
ついにかの地に降り立つことができた。

そこで我々を待ち受けていたのは、
4Dシネマなんて比べ物にならないほど五感を刺激される日々だった。

まず聴覚。
Wackenに出演するバンドはすべてヘヴィメタルバンド。
朝から晩まで爆音・轟音・シャウト・デスボイスが鳴り響いている。
近隣の住民にとっては地獄の4日間だったろうが、
僕らメタラーにとっては天国だった。

そして視覚。
ドイツの片田舎Wacken村に、
毎年ヨーロッパ中のメタラーが集結する様は異様だ。
メタラーたちは皆髪が長く、羽織ったGジャンに
好きなバンドのワッペンがズラリと並んでいる。
屈強な男たちが、小さなワッペンを
Gジャンの背中に縫い付けている姿を想像しては、
僕らは笑い転げた。

味覚も忘れられない。
言うまでもなくドイツはビールの国。
青空とビールとメタルが合わないわけがない。
僕らは朝から晩までビールを飲み続け、
ちょっと飽きたらイェーガーマイスターを飲む生活に浸った。
(肉ばかりの食事にはやや辟易したが、
 主食はビールという捉え方をしたら、気にならなくなった。)

次に触覚。
Wackenでしか触れることのできない
アイテムの一つにツノが挙げられる。
円錐状のツノが無造作に屋台で売られており、
どうやら酒を飲むコップにしてくれということらしい。
屋台を探しまわってリーズナブルなツノを入手した僕らは、
ツノにビールを注いで束の間のヴァイキング気分に浸ることができた。

最後に、嗅覚についても話さねばならない。
上述のように、この上なく楽しいWackenなのだが、
唯一の難点は鼻に襲ってくるニオイだ。
何を隠そう、牛糞クサいのである。
Wackenの会場は牧場のど真ん中に位置しており、
周囲や会場の地面から、
途切れることなく牛糞のニオイが漂ってくるのだった。

ポジティブな思い出はもちろん強く残っているのだが、
不思議なもので一Wackenの思い出と一番強く紐づいているのは
この牛糞のニオイだったりする。

日本に戻って、ふと牧場の近くを通ったりすると、
あの青空と爆音と、ワッペンまみれの漢たちを思い出すのだ。

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