リレーコラムについて

コロンボ VS 犯人

安藤宏治

物事を見る目というのは、実に人それぞれ。
そのことを痛感するきっかけとなったのは、
「刑事コロンボ」だ。

ご存じピーター・フォーク演じる、一見よれよれな風貌で、「うちのカミさんがね」なんて呟いて恐妻家の一面を覗かせてみたりしつつ、いかなる難事件も必ず絶対解決してしまうという、
あの有名敏腕刑事の人気ドラマだ。

小学生の時、このドラマを夢中で見た。
もちろん、「コロンボが、頭脳派である犯人をいかに追い詰めてゆくか」の過程を味わうことが何よりの醍醐味だった。
誰もが、コロンボの視点で、完全犯罪成立直前の犯人の裏をかき、隙を突き、真相へとじりじり近づいてゆく悦びを感じるドラマだと、大人になるまで私は信じていたのだ。

だが、大人になったある時、それがとんだ勘違いだったことに気づいた。やはり小学生の頃から夢中でコロンボを見ていたという妻は、平然と言い放ったのだ。自分はつねに、犯人の立場からコロンボを鑑賞してきたと。

「コロンボめ、今回もねちねちとしつこいな。今日こそ逃げ切れ! 逃げ切るんだ、犯人!」

手に汗握りながら、逃げ切れるわけはないと重々承知しつつも毎回、必死で犯人の立場に立って、スリルを味わっていたという。さらに驚くべきことに、「みんなそうだよ。それが、刑事コロンボだよ」と清々しいまでにきっぱり言い切ってみせる。

こんなに長年身近にいた人間が、まったく正反対の視点から古典ドラマを眺めていたとは。

さて皆さんは、一体どちら? 
コロンボ派? 犯人派?

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