リレーコラムについて

飲むと忘れる。

仲畑貴志

事務所に請求書が来た。
乃木坂のフレンチレストランからであった。
おかしい。
最近行った記憶がない。
しかも、ドンペリ6本とある。
フレンチで、飯を食べずにシャンパーニュだけ飲んで帰ってくるこ
となんか、ほぼない。
じぶんで電話をすると、きっとケンカになるから、経理の女性に、
請求書を見せて頼んだ。
ら!?
「あ、これ、いきましたよ」と彼女が言った。

その夜、経理関係の報告を聞きつつ彼女と食事をした。
それは覚えている。
その後、六本木のクラブへ行った。
ほぼ覚えている。
その後、乃木坂のワンショットバーへ行った。
なんとなく覚えている。
その後、西麻布のバーに行ったようだ。
覚えていない。
その後、六本木のゲイバーへ行ったらしい。
まったく覚えていない。
そして、乃木坂の事務所まで歩いて帰ったという。

途中、たまに行くフレンチレストランがあった。
ガラス張りで店内が見える。
客はすべて帰り、灯を落としている。
と、ボクがすたすた店に入っていくので、あわてて付いていったそうだ。

「ナカハタサン、今日は終わりでございます」と店の黒服。
「オワリ?じゃ、はじめてくれ」と、アタシ。
「今夜は閉めました」と店。
「シメタ?開けてくれ」と、こちら。
「食材もなくなりました」と相手
「ナクナッタ?さがしてくれ」
「いや、もう、ぜんぶ出ちゃったんですよう」
「デタ?入れてくれ」
「切れてます」
「つないでくれ」
てなわけで、「厨房のコックもみんな出てこい。シャンパンパーティだ」
となったそうである。

いつの頃からか、飲むと、まったく覚えていない。
先日、「TCCのリレーコラムの件ですが」とメールが来た。
飲み屋で約束したらしい。
しかし、まったく、完全に記憶にない。
いま、首をかしげながら、このコラムを書いているのだ。

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