リレーコラムについて

地球の裏側で怒られるユートピア

川地哲史

その夜、
僕は東京から遥か離れた南米の地、
ボリビアの標高4000mを超える首都ラパスで
上司からメッタクソに怒られていた。

先輩 「川地てめえ、出すっていってた見積どうなってんだよ!」

川地 「すみません、すぐ書きます!」

先輩 「2時までにつくってメールしたら、電話して!」

川地 「はい!」

ラパスの街の雑踏の中で、公衆電話を切る。
脇で売ってるうまそうなライスコロッケと、100%フレッシュなオレンジジュース。

バックパックに、くたくたなロングTシャツ、よれよれのズボン。
足元は、かのウユニ塩湖の名残を残した塩だらけのスニーカー。
そういえば昨日のバスは10時間立ちっぱなしだったっけ…

日本を出てから20日目くらい。
さっきまでの修行的な1人旅と、
見積という言葉のギャップにくらくらする。

しかも勢いに流されてはい!っていっちゃったけど、
日本時間の2時って。
ラパス時間の深夜3時っす、M先輩。
首絞め強盗が多発してるから
深夜は絶対外に出るなとさっき言われたんですが…。

まだiPhoneが登場する前、世界携帯も高価で、
通信は、ネットカフェと公衆電話に頼るしかなかった2006年ごろの話。
宿に戻った僕は、こんなこともあろうかと
バックパックの底から5kgくらいあるノートPCを取り出した。

いつもとれない夏休みの代わりに、
振替休日と年末を絡めて1ヶ月弱の休みをいただき、
南米やアフリカにバックパックの旅に出るという暴挙を何度かしたことがある。

社会人のバックパックは
学生の時のバックパックの旅とはまた違った感覚で
旅に溶け込むのに少々時間がかかる。

特にお金と時間の感覚。
たまったマイルでビジネスクラスで移動しちゃったり
すると最初の1日目は特に混乱する。

バックパックの旅はお金をかけない方が面白い。
ドミトリーに泊まって友達を作り、
現地の情報を得て、ガイドブックに載ってない旅に出たり
仲間うちのイベントに入れてもらったり…
その先のルートの情報を日本人ノートからメモしたり。

(ネットで何でも検索できる時代でも、
 マイナーなルートの細かい情報は結構出ていなかったりする)

学生のころよりお金はあるのに
ドミトリーに泊まるパラドックス。

さらに
アフリカや南米で出会った仲間はほとんどが仕事を辞めて
世界一周中の同年代。
世界一周中の彼らの体の中に流れる時間感覚は
うらやましいほどゆったりしてる。
心なしかしゃべり方もゆっくりしている人が多い。

この時間感覚に
昨日まで徹夜だ、提案だ、見積だ、再提案だ、
とやっていた僕は戸惑ってしまうのである。
もちろん3日もたてば僕もしゃべり方ゆっくりになるのだが。

そんなこんなで、
彼らと共にガイドブックに無い旅を続け、
体が完全に旅慣れた頃に、先の見積問題は発生する。

再び東京スタイルにお金と時間の感覚を戻して、
くらくらしながら宿でPCをたたきまくる僕に、
旅の仲間はなぜか感心していた。

てつ君、
ホントにサラリーマンだったんだ!
と。

でも2006年の、
このギリギリつながらない不便な感じ、
M先輩にはご迷惑をおかけしたけど、
これは意外にユートピアだったかも。

今の環境だと、どの国に行っても
スマホ片手にほとんどずっとオンライン状態だし
ほとんどその変のカフェで仕事しているのと変わらない感覚で
いつでも仕事ができてしまうような。

旅先にいるけど、
体内感覚は日本のまま、的な。
どうなんでしょう?

僕にも家庭が出来て、
今はとてもバックパックの旅行は出来ませんが、

いまでもたまに、
情報の手の届かない場所に解放されて
別の感覚に浸りたくなります。

今、登山やキャンプが好きなのは
そういう理由なのかも知れません。

さて

リレーコラム、
数回に渡り2015年の新人賞受賞者でやらせてもらいました。

そろそろ満を持して2015年、最高新人賞の「あんちゃん」こと
電通の山本さんに登場してもらおうと思いきや
秒速で断られたので、

 ( 2015年の同期会の名前が、僕が提案してしまった「まなべ」
   になっとことにきっと怒っている。すいません。超すいません。
   ※眞鍋さんのコラム参照
https://www.tcc.gr.jp/relay_column/show/id/3903 )
    

僕のリアルあんちゃんこと
元東急エージェンシーで現シカクの原晋さんにバトンをつなごうと思います。

原さんは今でもたまにお仕事ご一緒させてもらいますが、
とにかくプレゼンが上手でいつも本当に勉強になります。
今度登山連れてってください。

では原さん、よろしくお願い致します。

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