リレーコラムについて

「運悪くてよかったぁ。」

橋本晋明

僕には、アニキという親友がいます。
高校時代のバイト先の先輩ですから、もう20年来の付き合いです。

彼は、とにかく運が悪いんですね。

たとえば僕と街を歩いてて、
右足でガムを、左足でウンコを、
たった二歩で踏んでしまったりします。
それも、コンパに向かってる時ですからね。さすがです。

たとえばコンビニで肉まんを買って、
前歯が折れてしまったりします。
まだ肉の部分が解凍されてなかったんですね。なかなかです。

そう。とにかく、運が悪いんです。
それでも、アニキはいつでも笑ってるんですね。
何があっても、笑い飛ばしてしまう。
僕は、そんなアニキが好きなんです。

アニキは10年以上、滋賀県の新聞屋で働いているのですが、
先日、配達中の彼から電話がありました。
「はし!聞いてくれ!親父が見つかった!」と。

アニキの両親は早くに離婚していて、母親に育てられたんですね。
で、アニキと父親とは何度か会ったことはあるものの、
長い間、行方がわからなくなってた。
その親父が見つかった、というワケです。

そして、アニキがつづけたんですね。
「親父、新聞に載ってたんや!」と。

「…」

話によるとその日、配達までに時間があったので、
めずらしくアニキは朝刊を読んだみたいなんですね。
で、社会面の一番下に親父の名前を見つけたらしいんです。
もちろん、犯人として。

そんな再会、ありますか。

アニキはその日、親父の名前を載せた新聞を乗せて、
バイクで滋賀の町を走ったんですね。

「親父の名前を載せた新聞を配るって、
 俺、ものすごいジャーナリズム精神やろ。」と笑うアニキ。
僕は、一生、彼についていこうと思いました。

あれ、ゴールデンウィークがはじまるというのに
ちょっと暗い気持ちにしてしまいましたか…すいません。

コラムにこの話を書こうかなとアニキに相談したら、
「運悪くてよかったぁ。」と、大喜びしてました。

今日も、アニキは元気に笑っています。

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