リレーコラムについて

コードネームRP60

中山幸雄

三度目の出向先フロンテッジから
電通に戻ったのは2011年4月1日だ。
出向先のみなさんに
メールで帰任の挨拶をしたのが3月10日。
翌日が東日本大震災。
僕の帰任のニュースなど吹き飛んでしまった。

電通を定年退職するまでの3年8ヶ月に、
なにか二つ三つでいいから
グローバルとクリエーティブに関わる仕事を
古巣でやりたいと思い帰任を希望した。
無論、人事は自分の希望だけではなんともならない。
フロンテッジ、電通、クライアント、
僕のまわりのみなさんが理解し
動いてくださったおかげで希望が実現した。

6年の間に古巣も変化していたが、
幸い同僚に恵まれ、少しずつチームが整い、
願い通り二つか三つくらいは
グローバルとクリエーティブに関わる仕事ができた。

帰任当初から「コードネームRP60」と名付けた
個人プロジェクトがある。
日産のカルロス・ゴーンCEOに倣い、
Revival Plan 60と呼んでいた。
60歳以降の自分のプランである。

僕は「80歳現役計画」を立てているのだが、
その第一段階がRP60だ。
僕の現役の定義は、以下の通りだ。

  (1) 他人から要請があること(=誰かの役に立つこと) 
  (2) 無料のボランティアでなく収入を伴うこと 
  (3) その収入が日本の会社員の全国平均年収を超えていること

特に(3)はたやすく実現できることではないが、
まぁ心意気と言うか、目標だ。
(1)(2)を満たすためには、
具体的に人になにか提供できる必要がある。
それも、他人では提供できないもの(知識・情報を含む)があれば強い。
自分自身がコモディティにならないために、
過去の財産にすがるのでなく
常に自分をアップデートし続ける必要がある。

僕の場合は、(a)グローバルと(b)クリエーティブの掛け算が
一番可能性があると判断した。
日本の広告界では相変わらずニッチだが、
それなりに需要がある。
それに、(c)人材育成技術と(d)デジタルリテラシーを掛け算できれば
数年はサバイバルできるだろう。
すなわち、(a)x(b)x(c)x(d)である。

(a)の基本は語学である。
英語は日々使ってトレーニングを続けている。
途中休んだ時期もあるけれど、足掛け49年。
ドイツ語を10年。
中国語、ハングルを少しずつ学んでいる。
すべてNHKラジオ語学講座をベースキャンプに使う。
テキストブックを購入すれば重宝するが、
放送を聴くだけなら無料だ。
アプリ「NHKゴガク」をダウンロードすれば、
放送翌週に一週間分の番組がストリーミングで聴ける。

(b)は作品と人間にもう一度戻ることにした。
世界で誰がどんな作品を作っているか、見巧者でもありたい。
作品は広告には限らない。
デジタルアートなども含む。

(c)は社内やネットワークの研修の企画実施をできるだけ引き受ける。
13年には石倉洋子先生(慶應大学名誉教授)主宰
「グローバル・アジェンダ・セミナー」に5ヶ月通い
30代の連中と英語で議論し、プレゼンテーションの訓練をした。

(d)はスタンフォード大学で始まった
大規模公開オンライン講座「コーセラ(Coursera)」に登録。
インターネットの歴史・技術・セキュリティ、
プログラミング(Python)の基礎を学んだ。
Courseraは一部の特別講座を除き、すべて無料で受講できる。
英語で好きな領域を勉強するから一石二鳥だ。

(a)x(b)x(c)x(d)を最大化するために
弱いところを補強したり、強いところをさらに強化して
RP60を進めてきた。
とは言え、どれだけ訓練しても
現実の変化に対して充分とは言いがたい。
臨機応変、当意即妙の思考、行動が大事だ。
社会の中で暮らし、相手あっての世間だから
自分の準備だけではどうにもならないこともある。
次回はそのあたりを書いてみたい。

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