リレーコラムについて

「風呂はいってきた」

新志康介

私は大学生時代の多くの時間を友人たち(それも野郎)と
飲んでばかりいて過ごしていました。
いま思うと、少しは知的好奇心を刺激する講義に出たり、
なにより女の子と遊んでおけば良かったのにと思います。
でも、野郎の友人が面白すぎて、そいつらとばかり遊んでいました。

一応サークルなんてものにも所属していたのですが、
そこでも飲んでばかりいました。
ときには、デジタルのはかりと1人1つゴミ袋を持ち
(myゲロ袋と呼んでいました)
どれだけ飲んで、どれだけ吐いたかを計量し競うという
どうしようもないゲームをやっていました。

そんな私たちも大学を卒業し、それぞれが入社したてのころ。
とてもお世話になった先輩の結婚式の2次会に出席することになりました。
赤坂の大理石で囲まれた、とてもとても上品で高級なお店だったと思います。
友人とも久々に会った感じで盛り上がり、
先輩もとてもお酒が好きな方だったので、みんなでガバガバ飲んでいました。

会の途中でしたが、最初に新郎が酔いつぶれ意識が飛ぶというような状況で、
友人のなかでも一番酒を飲むJくんも椅子に座ったまま、
顔を上にして口を開け、いびきをかいて寝てしまったのです。

いま思うとやめておけって感じなのですが、悪ノリしていた私は、
酔い覚ましだとか言って、
Jくんの開いた口にウーロンハイを注ぎ込みました。

そのとき。
一生忘れることのないサラウンドが、私の耳を襲いました。
例えるなら、地面の裂け目からものすごいエネルギーで
マグマがわき上がるような音。
「コポ……コポ…コポコポコポコポーーーーッ!!!!」

その激しい地鳴りと同時に、
Jくんの口からは汚物がコポコポと湧き出てきました。
上品なお店に響き渡る、悲鳴。
Jくんを中心に同心円状に散り散りになる参列者。
それを見て笑っているのは僕らだけ。

Jくんはいいとこの子息だったこともあり、
その日は確かイッセイミヤケのオシャレスーツを新調し、
参列していたのですが、もちろんそのスーツも汚物まみれ。
真っ白なシャツと深い色のスーツが別色の服に変わるころ、
その「湧きゲロ」は止まりました。
そして、目覚めるJくん。

Jくん:「…ん、どうした?」
私:「どうしたじゃないよ、トイレいったら?」

そう勧めると彼は素直にトイレに向かいました。
会場のどよめきが冷めやらぬなか、Jくんは戻ってきました。
再び悲鳴を引き連れて。

なぜか頭から靴のさきまで、滝にでも打たれたかのように、
びしょ濡れなのです。
歩いてきた大理石の廊下もびっしょびしょ。

私:「どうした?」
Jくん:「風呂はいってきた」
私:「は!?」
Jくん:「洗うの面倒だから、手洗い場に水はって、風呂はいってきた」

衝撃の告白に、僕の友人は大爆笑。新婦の友人はどん引き。
そして、さらにひきつる店員の顔。

変人のJくんは、もともと手間がかかることが嫌いな人でした。
トイレに行き、服についた汚物を洗うのが面倒だと思ったのでしょう。
そこにあったモップなどを洗う大型の洗い場に水をはり、
それを風呂にして頭から沈んだというのです。

なんて自由な、ものの見方があるんだ。

僕はショックを受けました。
ここでも私は多様な視点の重要性を痛感するのです。

そして、帰り際。新婦から猟奇殺人犯のような殺意を込めた目線で
見送られことは言うまでもありません。
それはまさに、花嫁が鬼嫁になった瞬間だったと思います。

ごく一部、不快な表現があったことをお詫びします。

※一日遅れの更新、すみませんでした。

NO
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名前
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