リレーコラムについて

体重の減らし方

田中泰延

昨年、ダイエットして、体重が15キロ減った。

そのことについて書こうと思う。
なぜかというと、人気が欲しいからだ。

世の中、3つのことを話題にしていれば
だいたい、人気が出るのである。

それは、
お金の儲け方、
悩まない生き方、
健康な身体の作り方、
の3つである。

今週のベストセラーを見てみよう。

3位 「まんがでわかる7つの習慣」
小山鹿梨子 フランクリン・コヴィー・ジャパン (宝島社)

2位 「人生はニャンとかなる!」
水野敬也 長沼直樹 (文響社)

1位 「長生きしたきゃふくらはぎをもみなさい」
槙孝子 鬼木豊 (アスコム)

まさに上記3つの人気の出る話が、ずばりベスト3になっている。

日本人は本をよく読む国民だと言われるが、
なんのことはない。こういう本を争って買っているのである。

3位から見ていこう。

3位
「まんがでわかる7つの習慣」
見出しはこうだ。

第1の習慣 主体的である
第2の習慣 終わりを思い描くことから始める
第3の習慣 最優先事項を優先する
第4の習慣 Win-Winを考える
第5の習慣 まず理解に徹し、そして理解される
第6の習慣 シナジーを創り出す
第7の習慣 刃を研ぐ

…まったく何を言っているのかわからない。
なぜわからないかと言うと、読んでいないからだ。

しかし、おそらく上記の7つの習慣を身につければ、
お金が儲かるということをいいたいのだろう。

この7つの習慣でフィギュアスケートがうまくなるとか、
カラオケが上手に歌えるとはとても思えないからだ。

2位 「人生はニャンとかなる!」

“カワイイ猫の写真と272個の偉人の格言で、
人生の大切な教えが学べる本”

卑怯きわまりない。

上記3つの人気の出る話の次点には

動物の話
食い物の話

が続くのだが、この本はそのうちの
悩まない生き方と動物を組み合わせているのだ。

もはや私には

“おいしそうな料理の写真と158,236個の偉人の格言で、
人生の大切な教えが学べる本”

を書くことしか残されていないことが分かる。

しかし作者の水野敬也という人は、だいたいおもしろいので
たぶん面白いのではないかと思う。
買った人は貸してほしい。

そして
1位 「長生きしたきゃふくらはぎをもみなさい」

…いいかげんにしろ。
タイトルだけ見ればもう読まなくてもいいではないか。
もめばいいのである。

そもそも、なぜ
「長生きしたきゃおっぱいをもみなさい」
という本にしてくれなかったのか。

それなら
「あなたに長生きしてほしくて」
と言えるではないか。

こっちは、
警察に突き出されるか、感謝されるかの瀬戸際なのである。
よくよく考えて本を書いてほしい。

このように、健康法について書けば、
文章が読まれて読まれてしかたないのである。

今後は、広告のコピーもぜんぶ、健康になる話をすればいい。

ためしに、
「東京コピーライターズクラブ コピー年鑑 2013」を見て
もっと人気がでるコピーになるよう、添削してみようと思う。

ちなみに広告代理店の制作部門では、
TCC年鑑というのは、だいたい、床に置かれている。
今回私も床を見て歩いていたら置いてあった。

TCCグランプリ・高崎卓馬
「映画は、本当のことを言う嘘だ。」

いいコピーだが、惜しい。

「映画は、本当のことを言うと健康だ。」
にしておいたらもっと人気が出たのではないかと思う。

TCC賞・藤本宗将
「負けるもんか。」

すばらしいコピーだ。CMを見たとき泣いてしまった。
だが、これも
「負けるもんか。病気に。」
にしておけば、HONDAの車に関心のない、
健康のことだけ考えている人も興味を持つ可能性が出てくる。

しかしさすがである。

TCC賞・秋山晶
「時間栄養学」
キユーピーマヨネーズ。

さすがだ。わけがわかりすぎている。
わけの分かり方が違う。

そんなこんなで、ことほど左様に
健康とはもてはやされるものなのである。
健康のためなら死んでもいいとまで思う人がたくさんいるのだ。

なので、私が昨年3ヶ月で15キロ痩せたことは
もっと、もてはやされてもよい。

先進国の悩みの種は、肥満である。
アメリカ合衆国を例にとると、
なんと国民の3割が深刻な肥満に悩み、
残りの7割は重度の肥満に悩んでいるという。

ダイエットする方法を書けば売れるのは間違いない。
全米デビューも夢ではない。

さあ書こう。

“私は3ヶ月で15キロダイエットした。
その方法とは、
「あんまり食べなかった」
である。”

…もう終わってしまった。

はっきりいって、
悩まない生き方指南の本というのも
「しっかり寝ろ」
と書いてあればかなりの人に有効だし、
金儲けの本も
「ちゃんと働け」
と書いてあれば間違いないのである。

だいたい、千円そこそこで買える本に、
そんないいことが書いてあるわけがない。

ましてや、タダで読めるこんなコラムに、
大事なことが書いてあるわけがないのである。

ただし、私のコラムを読んで、
健康になったという声はよく寄せられることは記しておこう。

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