リレーコラムについて

クラブは、卒業のない学校だ。

岩崎亜矢

デスクでのりぴーの弟の記事を読んでいたら、
たまたま会社の人に話しかけられて、
ちょっと気まずい午後のひととき。
みなさまこんにちは、岩崎亜矢です。

のりぴー夫妻のおかげで、
「クラブ」というものが、お茶の間レベルで
「ドラッグ」と共に語られるようになり、
DJをしていると言うと、
どうもそわそわした目つきをされることもあります。

けれど、私が行くクラブはどこも、
どちらかとういうと「音楽バカ」の集まるような場所で、
みな一様にシャイで、真面目で、
人見知りで、恋人募集中です。
のりぴー的世界とは、逆を行く、
そこはとてもピュアな場所。

のりぴーには一度、
クスリの切れたクリーンな身体で
全国のクラブに謝罪行脚DJをしてもらって、
「ごめんなサマンサ」と言ってほしいと切に望みます。

ところで、私にとっていちばん影響を受けたクラブ。
それは、新宿の花園神社のとなりにあった、CLUB WIREです。

そこは、大貫憲章さんが主催する
「LONDON NITE」が行われてることで有名で、
不良という言葉がとても似合うクラブでした。
私は大学の先輩が店長をやっていた関係で
よく出入りしていました。
その後、そのWIREで月一開催の
イベントに出演することになったり、
なんだかんだ、一時は毎週のように
WIREに顔を出していたように思います。

毎月同じ場所でイベントをやっていると、
人の移り変わりというものを肌で感じます。
毎週のように顔を会わせていた人が、
ある日、ぱったりと姿を見せなくなる。
けれど、またすぐに新しい誰かとの出会いがやってきたり、
久しぶりの顔を見つけたりもする。
過ぎ去るものと来るものとの
めまぐるしい交差のまっただ中で、
いつも呼吸をしていました。

みんなフラフラと夜遊びばかりしていたけれど、
ある女の子は一児のお母さんになり、
ある男の子は地元へ戻り、
ある女の子は売れっ子のDJになり、
ある男の子はスーツに着替えて就職をしたりして。

年齢も経歴もバラバラな人が
笑ったり、怒ったりしながら
一夜のかがやきに身を寄せあっていました。

自分を取り巻く環境がどんなに変わっていっても、
そこに行けば誰かしらがいて、安心できる場所。
私にとってのCLUB WIREはそんな存在だったのです。

昨年、そんなCLUB WIREが、
営業停止となってしまいました。
風営法(風俗営業適正化法)を受けての営業停止処分です。
(風営法に関しては言いたいことはたくさんあるのですが、
ここで書くのはちょっと気がひけるので
詳しく書かれたサイトを載せることとします。
興味のある方はぜひ。
http://www.factry.co.jp/floornet/145/c1-5.htm
http://ameblo.jp/djlead/entry-11054077124.html)

どんなに泣こうがわめこうが法律には逆らえず、
しかも、3ヶ月の停止処分というのは、
小〜中規模なクラブにとってはクローズを意味します
(もちろん例外はありますが)。

いつでもそこにあると思っていた大切な場所は、
法律によって、いとも簡単に消え去ってしまいました。
あっけないものです。

この法律が変わらない以上この国にある「クラブ」は、
遠くない将来、なくなってしまうかもしれません
(でもまあ、今あるものがなくなったとしても、
また新しい「なにか」は誕生すると思います。
だって、そこは、人間だもの。み○お)。

新しい人や音楽との出会い、別れ、また出会い。
ただただ、その繰り返しなだけなのに、
なんでこんなに惹かれるんだろう。
なんでこんなに飽きないんだろう。
それともいつか、
私もその営みに飽きる時が来るのだろうか。

でもそれこそ、飽きたら飽きたで、
その時の自分というものが、とても楽しみでもあります。

COMEとGO、去と来は人生につきもので、
春ともなればその波がぐわっと押し寄せてきますが、
それが季節関係なく毎日やってくる場所。
そして入学したら、永久に卒業しなくていい場所。
それがクラブなんじゃないかな、なんて思ったりします。

*というわけで、今日の1曲は
「Come And Gone/Sim Redmond Band」。
ニューヨーク州イサカ出身の6人組のこのバンドは、
クラブよりも、きらきらした太陽や、
満天の星の下が似合うけど。

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