リレーコラムについて

からっぽの国で、からっぽに生きていく。

橋口幸生

なぜか流行語ランキングの類には
あまりランクインしていませんでしたが、
今年は数多くの迷言・珍言が生まれた年でした。

ただちに影響はない。

爆発的“事象”。

冷温停止“状態”。

これらの言葉に共通しているのは
一見意味ありげだけど、何も言っていない、
からっぽの言葉だということです。

今年いちばんブレイクした広告コピーは
間違いなく「ポポポポーン」なわけですが、
これも象徴的です。

よく「非常時ほど、人の本性が現れる」なんて言いますが、
震災のあった今年は、日本という国の本質が
ムキ出しになった年なんじゃないでしょうか。

日本的からっぽさが厄介なのは、
それを満たしてくれるものが現れると
すぐに飛びついて思考停止することだと思います。

いちばん最近かつ最悪の例だと、オウムがあります。

日本人は曖昧な国民なんてよく言われるけど、
こういう部分ではものすごく白黒ハッキリと
極端にふれるんですよね。

村上春樹さんは、こうした日本の特徴を指摘した上で、
自らの創作のモチベーションを
「原理主義やある種の神話性に対抗する物語を立ち上げていくこと」
と説明していました。

それはそれでものすごく意義があることだけど、
どうしても限界があると思うんですよね。
「1Q84」全三冊を読破するのは一カ月以上かかるけど、
オウム的な言説は5分で理解できる(苦笑)。

むしろ僕は、からっぽの器を
からっぽのままにし続けることの方が
大切なんじゃないかと思います。

原発事故以降、エネルギー問題についても
積極的に発言しているミュージシャンの小林武史さん。
僕が聞いた彼の言葉の中でいちばん印象的だったのは、
「脱原発より、脱“依存”」
というものです。

ライムスターの宇多丸さんが、
今年の一文字として「脱」を挙げていたのも、
同じことだと思います。

ここ10年くらいずーっと
「不安な時代」って言われてましたが、
今度こそ、本当に「不安な時代」がはじまりました。

わかりやすく、力強い何かが現れたとき
どうしても寄りかかりたくなります。

でもそんなときこそ踏みとどまって、
からっぽ&フラットに生きていきたい。
そう思ってます。

「絆」(笑)の2011年、
最後のリレーコラムにお付き合いいただき、
ありがとうございました。

次回ですが、旬な人にバトンを渡すのがいいだろうと思い、
今年新人賞を獲った後輩・大前匡史くんにお願いしました。

よいお年を。
そして来年を、よい年にしましょう。
本当に。

NO
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