リレーコラムについて

TCCというところ

小幡観

前回、軽い自己紹介をするつもりだったのに
なんとなく黒い雲が漂い始めてしまいましたね。
今回は、自己紹介の続きと、TCCについてもお話しましょう。

私は資生堂に勤めています。コピーライターとして入社したあと、
11年目か12年目だかに「社内企業家募集」という応募制度に参加。
採用されれば会社が1億円だしてくれるという破格さにひかれたのと、
10年間、春夏秋冬、化粧品のコピーだけを書き続けた疲労感もありました。
企画が採用され、新規事業部に異動しました。
異動するまでの10年間、これは、という作品が何本かありました。
しかし必ずしも自信作が年鑑に掲載されるわけではなく、
納得がいかずにヘソを曲げたこともしばしばです。
もちろん、「おっ、これが掲載? ラッキー」ということもあり、
天狗になったり、打ちしおれたりの10年でした。

さて、私の新規事業はそこそこの売上げを上げていたはずですが
2億、3億、5億円と毎年成長せよ、との期待にまったく応えられず、
また新規事業部そのものの発展的解消もあって終止符を打ちました。
5年ぶりに私は宣伝部に、さらに2、3年後エフティ資生堂の宣伝部に異動。
そのとき、TCCから声をかけられ総務部で1年間お手伝いをすることになりました。
単に人手が足りなかっただけなのでしょうが、
「オレを呼ぶなんて、さすがTCC、お目が高い」。
私はいそいそと出かけていきました。

TCCの内部に入って初めて知ったのですが、
とにかくみんなまじめです。総務部のメインイベントは年1回の総会ですが、
それ以外、ひと月かふたつ月に一度ある総務部の会合でも
会員のために何ができるのか、どのように会費を使うのが公平か、
会費は適切かなど、昼の弁当ひとつでみっちり話し合うのです。宿題も出ます。
なによりつらい仕事は、会費未納の会員一人ひとりに電話をかけ、
未納金の納入意志確認や、このままでは退会をお願いすることになる、
といった督促でした。未納のひとにはハガキが送られていましたが、
それでも支払いが滞る方もいて、そのまま会員にしていては公平性に欠ける
との理由からその年、大規模な電話作戦に出たのです。

ああ、なんかつらい思い出になってきたな。大雨になりそうなのでここまでに。
最後にTCCに関連した事柄についてひとことだけ触れましょう。
同時期に新人賞をとったコピーライターで
いまでも同じ仕事をしているひとはごく少数です。
総務部にいたころ、
「コピーライターっていうのは、最後はどういう仕事をしている人が多いのか
いつか調べてくれよ」と仲間のひとりに頼まれていたのですが、
その約束もいまだ果たさないままなっています。
振り返れば自分自身、一生懸命仕事に打ち込むライターではありませんでした。
授業で指されて恥をかくのが恐ろしく、それを回避するだけのために
前夜必死で英語辞書を引きまくる。
そんな、TCC会員にあるまじき情けないコピーライターでした。
そして、私は現在、資生堂の宣伝制作部でプロデューサーをしています。
(資生堂「宣伝部」は何度か名前をかえ、現在は「宣伝制作部」です)
ただし、費用のないブランドでは隠れてコピーライターも務めます。
そのときだけは、なぜか自由自在に筆をふるうことができるのです。

(次回はまったく関係ないお話。おたのしみに!)

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