リレーコラムについて

看守

佐倉康彦

スミマセン。昨日は、ズルしちゃいました。別に倒れたわ
けではありません。ただ、撮影とプレゼンと徹夜と深酒と。
言い訳だらけで、なんとか第4回目です。

「大部屋にしますか?個室にしますか?」光浦似の天使が
ファミレスのメニューのようなモノを持ってきました。病
室のグレードが一目でわかる手作りの一覧表です。大部屋
から個室まで、様々なランクに分かれています。ゴージャ
スな応接セット付きの個室は、写真まで載っています。病
室は、しっかり松竹梅、並中上、特上と別れていました。
考えてみたら、この病院、代議士のセンセーが厳しい国会
喚問を逃れるために使ったり、アイドルがやんごとなき理
由でお仕事ができずマスコミをかわす時にお忍びでも使っ
たりする病院で、ゴージャスなところは結構スゴそうです。
ただ、この病院、建物が非常に老朽化していて、そのゴー
ジャス系の病室も写真で見る限りかなり年代を感じさせる
調度品のように見えます。どうせ今夜だけだろう。一瞬、
大部屋でも良いかと思いつつも見栄も手伝って、僕は個室
を選んでいました。その日の僕の疲労度と弱り具合はかな
りのモノで、一日ぐらいならゆっくり個室で和みたいとい
う誘惑に負けてしまいました。ただ、その個室、ランクか
らいうと並の下。もちろん、写真はつていません。一抹の
不安を抱えつつ、天使に導かれるままに、病室のある7階
へといざなわれる僕。
エレベーターの中で天使は入院時の諸々の注意事項を僕に
伝えてくれます。あの甲高い声がまるで小鳥のさえずりの
ようです。ついに7階に到着。病室のドアの前に来るたび
に「ここかな?あっ、こっちかな?」などと勝手に予想し
て立ち止まる僕を天使は意に介さず、どんどんフロアの奥
へ奥へといざないます。もう行き止まりです。あるのは用
具置き場みたいなアコーディオンカーテン(懐かしい)で
閉ざされた空間だけです。「ハーイ、佐倉サーンここです
よー」天使は唄うように僕にそう語り掛け、アコーディオ
ンカーテンを引き開けます。
そこには、昔、夢中になって読んだ「あしたのジョー」に
出てきた少年院の独房が見事に再現されていました。窓の
ない寒々とした四角い箱。唯一、少年院と違うのは旧い温
泉旅館とか旧いラブホにあるような百円玉を入れると見る
ことのできる14インチのテレビがあることくらい。天使
の顔が、いつの間にか看守の顔へと変わってゆくのを僕は
見逃しませんでした。   
          (つづく…いったい完結するのか)

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