リレーコラムについて

空手話 その2

篠原直樹

試合が終わり、ヘトヘトになって座り込んでいると息子がすぐに飛んで来ました。
「パパ、大丈夫っ!?」
「…いきなり…だもん。勝てる…わけ…ないよ。」
と喋るのがやっとの僕。
「…そうだよね。」
そう呟いたまま、彼は下を向いて無言になりました。

息子の様子がどうも変だ、と感じ始めたのは、帰宅して近くの公園で一緒に遊んでい
た時でした。いつもなら自転車やサッカーで大はしゃぎするのに元気がない。しょん
ぼりと俯いて口数も少ない。夕食もめずらしく半分以上残してしまいました。
「身体の具合でも悪いの?」
「…別に。」
と、釣れない返事の息子。

寝る時間になっても相変わらず。いつもならベッドで何か本を読んであげるのですが
、それも今日はいい、と言って布団を頭まで被って寝ようとする始末。やっぱ風邪で
も引いたんじゃないか、と思っている矢先…。息子の小さな布団が小刻みに震え始め
たんです。やがて布団の中から彼のすすり泣く声が聞こえてきました。

その時、僕はようやく気づきました。息子がずっと元気がなかった原因は、風邪でも
何でもなく昼間の僕の組手の試合だったんですね。目の前で、自分の父親がボコボコ
にされている。喧嘩じゃないと理解はしていても見たくなかったんでしょう。問いた
だすと図星でした。そこからは堰を切ったように大粒の涙が零れ始めて。そのうち泣
き疲れたのか、そのまま寝てしまいました。

息子の寝顔を見ながら、今度はこっちが眠れなくなってしまいました。面倒なことに
なったなぁ…組手なんかしなきゃよかった、と。どんな仕事でも眠れないことなんて
ないんですが(苦笑)。

悶々としながら思ったことは、僕には2つの選択肢があるということです。1つ目は
、息子が組手の試合を忘れるまで待つ。子供ですからね、時間が経てばそのうち忘れ
るでしょう。2つ目は、キチンと稽古してリベンジする。前者は楽。後者はキツイ。
どっちにするか…。

朝まで考えた結果、僕は後者を選びました。プチ・マゾですね(笑)。

                                 <続く>

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