リレーコラムについて

空手話 その1

篠原直樹

息子と空手をやっています。彼が3歳の時からなので、もう数年になるでしょうか。
今でも、週に一回は必ず稽古に通うようにしています。どんなに忙しいときでも、何
故かその時間だけは空くので不思議です(笑)。

空手は一般的に、演武する「型」と、実戦する「組手」の大きく二つに分かれます。
僕たちは、息子が主に「型」で、こちらはもっぱら「組手」を稽古しています。組手
は、流派によってそれぞれルールが違いますが、通っている道場では“スーパーセー
フ”という顔面を守る防具をつけての直接打撃制。当てる寸前で止める“寸止め”と
は違うので、危険といえば危険です…。以前大会で、ある選手の上段突き(右ストレ
ート)が相手のスーパーセーフの分厚い面を突き破り、前歯を二本とも粉砕させてし
まった瞬間を目撃したことがあります。あの時は、さすがに背筋が凍りました。

何で30代後半にもなって組手なんかしてるんだ、と言われそうですが、始めたキッ
カケとして大きな理由が一つありまして…。

あれは、入門して半年くらい経った頃でしょうか。まだ当然白帯です。僕が稽古して
いると、師範が僕のところにやって来て言いました。
「篠原君、いい体格してるね。何かスポーツやってたの?」
「学生の頃は、ずっと水泳部でしたけど…」
そう答えると、
「ふ〜ん。じゃ、試しに組手やってみる?」
「…は?」
僕が困惑していると、師範はニコニコ笑いながら、
「大丈夫、大丈夫。手加減するから。お〜いっ!!」
そう言って、色帯の道場生を呼びました。聞けば僕とほぼ同年代。う〜ん、悩む…。
でも、黒帯じゃない…。ま、何とかなるか…。見た目も華奢だし…。師範に断りきれ
ない雰囲気もあったので、簡単なルールだけ頭に入れて、いざ試合に臨むことになり
ました。

いやぁ…ナメてました。開始早々からボコボコ。相手の技が速すぎて全く見えないん
です。自分も技をどうやって出していいのかわからない。ま、当たり前なんですけど
ね。頭で理解したって身体がついていくわけないですから。たかが1分半の試合時間
が、もう1時間にも2時間にも感じてしまって。最後は、強烈な上段突きをまともに
食らい、スーパーセーフが吹っ飛んで壁の方まで飛んでいきました。それを目で追い
かけていると、心配そうに僕を見ている息子がふと視界に入りました。ヤバ…カッコ
悪すぎる…。

                                           <続く>

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