リレーコラムについて

実森潤の話

左俊幸

はじめまして。電通九州の左です。

前回のコラムでもお話ししましたが、
僕は顔が濃いせいか、女性に対して積極的だと思われがちです。
が、それは見掛け倒しもいいとこで、実際はかなりシャイなのであります。
息子(2歳)と同じ歳の女の子と喋るときでさえ、かなり緊張してしまう。
それほどのシャイな奴、というか、もはやキモい奴の域に達しているのであります。

今日はそんな超キモい僕が尊敬する友人、サネモリの話をしようと思います。

あれはもう7年前のこと。
当時カノジョと別れたばかりだったサネモリは、
仕事が忙しく、まったく出会いがないと訴えておりました。
当時の彼はガツガツ出会いを求めており、実にオスらしいオスでありました。
一方僕は、その頃ちょうど結婚間近でしたし、
だから最初はめんどくせえなと思いながら聞いていたのですが、
パッとあるアイデアが浮かび、某出会い系サイトを紹介したのでした。

そのアイデアとは、サネモリが登録するサイトに、僕も女性として登録し、
ネカマとなってサネモリにメールを送りつける、というものでした。

作戦は早速成功し、
「左くん、めちゃくちゃイイ女と知り合ってさあ」と
さっそくサネモリから電話がありました。
今まさに話している相手が、
その「めちゃくちゃイイ女」の正体であることなどまったく分かっていない、
危機管理能力ゼロの口調でした。

さらに僕は、サネモリとのメールのやりとりのすべてを、
リアルタイムで共通の友人たちに送信するというアイデアまで思いつき、
非常に広がりのあるキャンペーンを構築致しました。
そして実際、そのキャンペーンは、仲間内でかなり盛り上がったのでした。

が、しばらくやりとりをしてみると、
サネモリのメールの文面には、10年来の友人である僕らも知らない事実が、
たくさん書かれるようになりました。

たとえばサネモリが、休みの日に海に絵を描きに行ったりすること。
たとえばサネモリが、庭で花を育てていること。
たとえばサネモリが、休日の日においしいパスタを作ったりすること、などなど。

サネモリが絵を描くことも、園芸をすることも、料理をすることも、
僕はそのメールのやりとりをするまで、全く知らなかったのです。
というか僕だけじゃなく、友人たち全員、誰一人として知らなかったのです。
サネモリが、(10年来の親友を自負する)僕たちには全く教えなかった情報を、
知り合って数日の、しかもメールでしか知らない女性には嬉々として教えている。
その事実に、僕らは、なんだかとても打ちのめされました。

そんなこんなで最初は面白がっていた僕らも、だんだん引いてしまい、
その後、徐々に性欲的なものまで押し出しつつ、グイグイ迫ってくるサネモリに対し、
僕は完全にドン引きしてしまい、徐々に返信も出来なくなり、結局やりとりは途絶え、
さらに正体も明かすに明かせなくなり、
結局その後、僕たちはそのことをサネモリに言えぬまま半年ぐらいが経ちました。

しかし10年来の親友を自負している以上、
そのことを言わなかったら言わなかったで、なんだかとても気持ちが悪く、
だから、僕はタイミングを伺っていました。

このことを言うタイミングは、サネモリが絶対に怒れない場じゃないといけない。

で、そういう場がようやくやってきました。
僕の結婚式の3次会です。

サネモリを含む高校時代の友人達だけになった僕の結婚式の3次会。
みんな酔っ払って相当盛り上がっているときに、
僕は思い切って「なあ、はるき」と突然サネモリに声を掛けました。
「はるき」はサネモリが出会い系サイトで使っていたハンドルネームです。
そのとき飲んでいた友人達は、みんなメールのやりとりを見ていたメンバーだったので、

「はるきって海で絵とか描くらしいじゃん。」
「あ、はるき、お庭のお花は育ってる?」
「はるきクン、最近はどんなパスタ作ってんの?」

などの質問が、矢継ぎ早に飛び交いました。
僕らが涙を流しながら笑っている傍らで、はるきの、いや、サネモリの顔色は、
みるみる青ざめていきました・・・。

後日談としていい話をひとつ付け加えると、
その後サネモリは無事に結婚し、子供も産まれ、その子も先日1歳になりました。
サネモリはいまはもう、ガツガツしていた「はるき」の面影など全くない、
非常に子煩悩かつ家事にも協力的なお父さんになっています。
ただ問題は、サネモリが僕の奥さんの妹と結婚したことであり、
ですから僕とサネモリの関係は、
「親友→出会い系のメル友→親戚(義理の兄弟)」という風に変化を遂げているのです。

神様は、僕とサネモリのことを、いったいどうしたいのでしょうか?

NO
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