リレーコラムについて

新しいことはやってみないとわからない

佐藤義浩

昨日の話の続きになりますけど、
技術も何もない新人がいきなりウケるものを作ってしまうこと。
これってどうしてなんでしょう。

たぶん、その人の感覚が、その時代をすごく感じていて、
普通に発することが、そのまんま時代とマッチしているから。なんでしょう。
そこには、技術だけでは解決できない、一番大切なものが隠されています。

若い人だから、みたいに言ってますが、これって実は年齢に関係ない。
ボクらみたいな歳になっても、モノを作ってみて、
あれ?なんでコレってこんなにウケるんだろう…?ってことが
けっこう…いや、すごくあります。

それは決して偶然ではなく、
自分のカラダは、その感覚をつかんでいて、しかしそれは説明できない。
自分の感覚を信じて作ると、それが時代とあっていた場合、ウケる。
後で振り返ってみると、ああ、これはこういう理由でウケたんだ。
ということはわかる。しかし、作ってる時点ではわからない。

本当に一流のクリエーター、佐々木さんとか、澤本とかは、
たぶんわかって作ってるんだと思います。
しかし、自信を持って言いますが、ボクにはわかりません。
これがわかってれば、打率も上がるんだけどなあ。

でも、後づけで気づいたことは、ノウハウとして蓄積されます。
そのノウハウが、どのくらいの時間有効なのかは疑問ですが…。

わかりやすい例で言うと、リクルートのショッカーのやつと、
山田悠子のやつはまさにそれでした。
根っ子には、東畑の持ってる感覚があって、
今のターゲットの世代が感じる、就職や転職に対するスタンスみたいなものと、
こちらからの語りかける目線の高さがマッチした、ということです。
くわしい説明は企業秘密なので避けますが、
これらの作業のおもしろいところは、作って流した後にありました。

あの二つの作業は、決して賞狙いではなく、
予算や事情でオンエア回数がすごく少なかったんです。
普通ならそれはそれで、知る人は知る、ちょっと変なCMで終わるはずでした。
それがボクらの手のとどかないところで、勝手に動き出しました。
オンエアしてないものを、ネットで見ることができる、という
今どきの事情が猛烈に機能して、どんどん広がっていったのです。
広がり方も、ブログやメールという、横にいなくても伝わる方法でした。

その状況を見て、あれ、今の時代ってそうなんだ。と、
後で気づいたのです。

なんだよ。計算してやったわけじゃないんだ。と言われるかもしれませんが、
ホントなんだからしょうがありません。

今って、メディアってこういう感じなんだ。
これまでみたいにCMだけで完結するものじゃなくて、
勝手につながっていくものなのか。と。
で、そうなってくると、大切なのはコンテンツとしてのCMの出来です。
つまんないものは広まりませんから。
だからおもしろいことが何よりも大切。

あとは、やっぱりCMって重要だってこと。
なくなっちゃうと言われた時代もありましたが、なくなるのではなく、
役割が変わる、という感じです。
さまざまなメディアをつないでいくときの、入り口になる。
だから、そこに必要なのは、理解を上げていくことよりも、
もっと深く知りたくなること。
知りたいと思わせれば、あとは自分で調べることができる。
逆に言うと、深く知りたいときに、CMなんて見ない。15秒じゃ、何もわからない。
よくクライアントに、こんな量、15秒に入んないですよ。と言いますが、
そんなこと、テレビ見てる人の方が、よっぽど知っているのです。

何も知らない人が、自分の感覚が時代とマッチすることで、ウケるものを作る。
それと同じように、ユーザーの方も、何もむずかしいことは知らなくても、
感覚でそれがおもしろいかどうか感じる。
だから彼らにとっては、理屈ではないんです。
結果として、理由はあります。
だけど、理由から表現を作ってもなかなか当たらない。

狙って作るものは、なかなか当たりません。
それは、蓄積したノウハウが、すでに時代とずれているのかもしれない。

誰かが作ったものを見て、こういう方法、と、応用しても、
それってもう古いのかもしれない。それくらいの速度で世の中は動いてます。
だから一番大切なのは、今の自分がどれくらい今を感じているか。
それは説明できなくていい。というか、たぶん説明できない。

むずかしいのは、自分で説明できないことで、どうクライアントを説得するか。
一番いいのは、その感じを共有できるいいクライアントに出会うことと、
よくわかんないけど、キミの言うことは信じるよ。というくらい、
クライアントに信用してもらえること。

これってなかなかないことですよね。
リクルートさんには、これがありました。よかった。

あとは、こいつの言うことは間違いない。というくらいのカリスマになるか、
それが無理なら、こいつってなんか憎めない、といういい人になるか。
ボクは後者の路線を突き進んでいます。

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