リレーコラムについて

本棚

村田徹

住宅誌やインテリア誌で紹介される、
一般の人の家を取材した写真、最近はますます洗練されてきた。
建築家ブームや都会のタワーマンションブームなど、
上質なライフスタイルをしている人が増えているからだろう。
それは良いことだけれど、そういう写真を見るに付け、
その家にある本棚の本や冷蔵庫の中身はどうなっているのか?
とても気になる。その人の本当のライフスタイルや人間味は、
家具や飾ってある絵ではなく、
そこに息づく小さなディテールにあると思うからだ。

インテリアはその人の美意識、
しかし美意識は、時としてその人の本質を包み隠そうとする。
人の家に招かれて、センスよく片付いている家であればあるほど、
隠れたところを見たいと思うのは、本当のその人を知りたい興味からだ。

「本棚が見たい!」という、
作家の本棚の写真ばかりを集めた写真集がある。
作家の本棚には何ともいいがたい「凄み」がある。
だから見ているだけで想像力がはたらく。

知り合いの女性の写真家で、
お年寄りの部屋の写真を撮り続けている人がいる。
面白い着眼点だな、と思った。

歳を取ると、
部屋にあるひとつひとつの「ものの意味」が時間と共に濃縮されていく。
歳を取ると、
部屋は人をもてなす場ではなく、「自分だけの場」になっていく。
だから、その人の生き方が隠されることなく、
写真の中に自然と見えてくる。

先日、僕の父の部屋を彼女は撮りに来た。
彼女の目から見た父の部屋はどう写っているのだろう。

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