リレーコラムについて

イチロー語録 「満足があるから」

藤崎実

求道者イチローが野球少年としての一面を見せた、
2006年ワールド・ベースボール・クラシック。
その姿に感銘を受けた人は多いのではないでしょうか。

もちろんイチローには、カレーライスが大好きな
普通の青年としての顔もあり、それも有名。

がしかし、僕はまだ本当のイチローを知らなかった。
イチローはもっと独創的で、もっとすごい奥深さを持っていた。

  ◆◆

茂木健一郎さんの素朴な質問に、自らを語るイチロー。
ご覧になった方も多いと思いますが、
今年の1月にNHKでオンエアされた「イチロースペシャル」は
イチローのすごさに溢れていました。

※以下、録画していたわけではないので、
各自の発言は僕のメモと記憶です。ご了承下さい。

  ◆◆

「イチローさんはクールなイメージがありますよね。
また自分を追い込んでいくタイプのように見えますが
そんなに自分を追い詰めて疲れませんか?」

茂木さんのこの質問に対する答えが、
何といっても最大の驚きだった。

「・・・僕は満足するんです。
満足しないと続きません。疲れちゃいます。
僕はどんなことにも一度満足する。
満足があるから次に行けるんです」

  ◆◆

何と意外な、しかも素敵な答だろう。

普通、僕たちは何かを成し遂げる強靭な精神の男に対して、
「決して満足しない男」というイメージを抱いている。

「こんなことでは決して満足しないし、満足できない!」
そして自らの可能性を信じ、どこまでも追及する男、
というのが一般的なイメージだろう。

しかし、それはあくまでイメージに過ぎないのではないか。

  ◆◆

女性アナの「運命を信じますか」の質問に
「信じてます」とキッパリ答えたのも意表を突いた。

ここも誰もが「運命は自分のチカラで切り拓く」もしくは
「運命は努力次第」などといった答えを想像したに違いない。

しかし、それもあくまで一般論に過ぎない。

  ◆◆

スイートスポットが極端に狭いため、
一般的にはヒットが出にくいとされている
細身のバットへの発言も驚きだった。

「このバットを見た時、すぐにこれだ!と思ったんです。
・・・理屈じゃないんです。このバットが好きなんです。
このバットで打てなかったら、自分が悪い」

自らの挑戦のためにこのバットにした、とか
試行錯誤の末の選択、ではないのに驚きましたが、
いや待てよ、と思ったのです。

自分の感覚を絶対的に信じる、と力説するイチローは、
果たしてただの感覚人間なんだろうか。

科学やデータから下された選択が本当に正しいのか。
これから、という未知の領域に向かう時、
絶対に正しいという選択基準は本当にあり得るのか。

ここで「人」というものは、
さまざまな経験や情報が集積されているデータベースである、
と考えてみる。

すると実は「直感」とは、
膨大な情報から選択された最適な答なのではないか。
つまり自分が頼るに値する判断基準は、
自分の「直感」以外はないのではないか。
と思えてきたのです。

  ◆◆

僕のメモ帳にはイチロー語録がしっかりと書かれている。
「満足しなければ、次に行けない」
「満足があるから、次に行ける」

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