リレーコラムについて

ボンネット山本さん。おからの消滅。

赤松隆一郎

それは息子の無邪気な質問から始まりました。

「パパ」
「んー?」
「このしゃべってる女の人いるやん?」
「え? ・・・・ああ、 カーナビの案内の声のことか」
「この女の人な」
「うん」
「どこにいるん?」
「へ?」
「どこでしゃべって道を教えてくれてるん???」

「・・・・・ボンネット」
「???」
「前の、ほら、ボンネット、の中」
「ええええっ!?」
「ちょっとだけある隙間からな、前を見て道教えてくれてるんだわ」
「そーーなん!?」
「山本さんっていうおばちゃんだよ」
「えー!!そーなんやー。見てもいい??」
「やめとけ」
「なんで?」
「すごい恥ずかしがり屋のおばちゃんだから、道教えてくれなくなるぞ」
「ふーん」
「それにな」
「うん」
「せまーいところに、ヘンなカッコで小さくなって入ってるから、おぬし見たらびっくりするわ」
「どんなカッコ?」
「それはちょっと・・・・パパにもうまく言えんな。あれは、すごいヘン、としか言いようがない」
「パパ会ったことあるん?」
「一回だけな」
「いーなーー」
「まあもうちょっと大きくなってから会ったら?」
「うーーん。」
「・・・それはそうと、幼稚園楽しいか?」
「・・・何が好きなん?」
「あ?」
「山本さんは何が好きなん? 食べ物」

「・・・・・・・・・おから」

この日以降、
食卓にたまにおからの和え物が出されるたびに
「山本さんに食べさせにゃああああっ!」
と小鉢を持って玄関へ走る息子を
僕はあの手この手で制止するはめになり
必然的に我が家の食卓から、おからは姿を消したのです。

将来、真実を知った息子がグレるようなことがありましたら、
その時は誰か僕の愚痴を聞いてください。
小料理屋で。
酒でも飲みながら。
おからでも食べながら。

また明日。
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