リレーコラムについて

恥ずかしいって、いいですよね。

小西利行

昨日、数人の人に、あまりにも自画自賛で邪魔くさい
とすら言われるほど、僕は、会社名を気に入っている。
なにそれ?という方は、ぜひとも昨日のコラムを読んで、
むかっとする感覚を覚えてほしいほどだ。

しかし、正直、その大好きな名前に、いまだ慣れない。
これは仕方ないことかもしれない。
13年間以上「博報堂の」という肩書きで生活してきて、
いきなり「POOLの」という肩書きになるのは、やはり、違和感がある。
そういう意味では、25年以上「鈴木」だったのに、
結婚して、次の日から晴れやかな顔で「高橋です!」
と言い放てるすべての奥様に、心から敬意を表してしまう。

でも、僕が「慣れない」のには他の理由もある。
その名前の響きそのものの問題だ。
最近の生活の中で一番それを感じるのは、銀行。
手続きが終わって、あの何ともそっけない椅子に座って、
仕方なく傍らに置いてある「女性自身」をぱらぱらとめくっているときに聞く
あの、「POOL様」という音声!
思わず、僕じゃないです、と目を伏せてしまう。
別に名前がいやだからではない。なんていうか、恥ずかしいのだ。

以前、伊右衛門というお茶のの名前をつけたときに、
それが駅のKIOSKですごく売れていて、僕も、すぐに買ってみた。
でもどうしても恥ずかしくて名前を言えないので、「そのお茶ください」と言ったら、
「伊右衛門ですか?」と言われて、小さな声で「・・・そうです」と言った記憶が蘇る。
僕の感覚では、自分のつけた名前を言ったり聞いたりすることが、恥ずかしい。
もちろん少し誇らしいこともあるが、でもどうしても恥ずかしい。
自信もって会社名とか自分のつけた賞品の名前を誇る人を、尊敬する。

話を戻すと、銀行で「POOL様!」と言われるのは、かなり恥ずかしい。
しかも彼女たちは、なかなか僕が立ち上がらない気持ちを知らずに、
いや、知っていて、意地悪に、どんどん大きな声で「POOL様!」と連呼する。
僕からすると、悪魔の呼び声だ。ヒヒヒヒって感じにすら聞こえる。

しかし、そう考えると、かなり危ないことをしようとしていた過去もある。
会社の名前を、博報堂の仲間たちと考えていた時、
「コニタン(そう呼ばれている)はさあ、食事に関係する名前とかいいよ。
おいしそうなの。例えば「ミートボール」とかさ。」
と言われて、本当にそういうのにしようかな、と思ったこともあった。
しかし、その名前を銀行で言われたら、顔から火が出るどころではない。
僕は少し(本当はわりと)太めなので、「ミートボール様」と呼ばれて、
「はい」と立ち上がったら、周囲から「ぷぷぷ」の嵐である。
周囲は絶対に僕を見て、がつがつミートボールをほうばる姿を想像する。
何だったらミートソースすらかかっているような、あまりにもカロリー過剰な
イメージを僕に当てはめて笑うのだ。
ああ怖い。POOLでよかった。ほんとよかった。

しまった、僕の妄想癖を露呈してしまった。
僕は危ない人ではないが、いつも、そんな妄想をしながら生きている。
勝手に周囲の反応を想像して、笑ったり、怖がったり、悲しんだり。
そしてそれをとても大切なことだと思っている。
さらに、それが自分が作り出したものに関してならなおさらで、
コピーでもCMでも商品でもなんても、どうなっていくのか?
世の中はどう思っているのか?どうすればもっとよくなるのか?を
妄想するようにしている。それを考えるのは、僕たちの責任だと思ってる。
最近、若い人で、その感覚がない人が増えてる気がする。
出したら、終わり。後は世の中の判断ですよ!
それは潔いようで、責任逃れな気がする。
常に、自分の生み出したものたちに、
恥ずかしいとか嬉しいとか、悲しいとか、という感情を持ち、
世の中の感覚をリアルに肌で感じることが大切だと思う。
そうしないと、結局、世の中が反応するものがつくれなくなるから。
僕たちは、自分の感覚でしか世の中とつながれない。
想像し、妄想し、誰かと接触し、感じて、自分の体にその感覚を取り入れて、
そしてそれを形にしていくということでしか、物を作るできないと思う。
想像や妄想を捨てたら、何も生み出せない。

おっと、自分の会社の名前と自分の変な妄想癖から、
偉そうなことを言ってしまった。いかんいかん。

次は、妄想癖のことでも書こうかな?

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