リレーコラムについて

夢は、小さかった。

吉岡虎太郎

小学生男子の夢NO1は「普通の会社員」だそうですが、
僕ももともと小さな夢しか持っていませんでした。

僕は広島の山間部の田舎町で育ちました。
汽車(電車ではなくディーゼル機関車です)の窓から
立派なツノの牡鹿が走っているのを見たことがあります。
裏の畑でキジが羽を広げるのを見たことがあります。
おととし実家に帰ったら近所の知りあいが
ウリ坊に首輪をつけて飼っていました。
(溝にはまっていたのを捕まえたそうです)

大学で上京することになった頃には、
マスコミ関係の仕事をしてみたいなあと
漠然とした夢を抱くようになっていたのですが、
こんな田舎者では無理だろうと思っていました。
幸運にも就職できて今に至るのですが、
いつかTCC新人賞だけはもらいたいなあ、
というのが新人の頃の夢でした。

堀江敏幸さんの「河岸某日抄」という小説の中に
「1+1=1の世界」という話が出てきます。
理科の実験で並列つなぎの電球の光が
直列つなぎにした途端輝きが倍増するのに感心する
教室の雰囲気に違和感を覚えた作者が、
ふたつつないでるのに明るさが変わらない
並列つなぎの方に心魅かれるという話です。
日頃「1+1が3になります」みたいな話をしているので、
目が覚めるような気がしました。

TCCに入って、いつのまにか今年で10周年。
恥ずかしながら審査委員長賞なるものを二度いただき、
最近、夢はほとんどかなっているということに
気がついて愕然としました。
だから、幸せかというと、そうでもないのですが。

あとはうちの奥さんが
いつか「情熱大陸」に出ることを夢見ているので、
どうやったらそんなことになるのだろうと、
途方に暮れるばかりです。
        ※
一週間ありがとうございました。
来週はフランスから帰ってきたみんなの姉貴、
佐々木貴子姫の登場です。乞うご期待。

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