リレーコラムについて

下町人情キラキラ橘商店街

大澤範之

数十年後、どんな街に住んでいるかはわからないが、にぎやかな商店街の近くに
住んでいたいと思う。

僕が住んでいるのは墨田区の京島という下町で、自転車で15分ほどで浅草に着く。
自宅のすぐ近くには、下町人情キラキラ橘という変わった名前の商店街がある。
休日はだいたいその商店街をぶらつく。チェーン店は一つもなく、両脇に様々な
個性的な店が立ち並ぶ路地は、休日の夕方ともなると、たくさんの人で賑わう。

商店街に入るとまず、うなぎの蒲焼きの香ばしすぎる匂いに殺られる。吸、吸、
吐、吸、吸、吐のリズムで呼吸をしながら過ぎると、昭和2、30年頃に作られた
看板を今でも使っている床屋、ふとん屋があり、やがて焼き鳥の匂いが胃を刺激
してくる。3回に2回はここで小銭を手にしてしまう。アツアツをほうばりながら
進むと、肉屋、魚屋、八百屋、そば屋、ギョーザ屋、お茶屋、果物屋、総菜屋、
おでん屋、乾物屋、そしてコッペパンしか売らないこだわりのパン屋が建ち並ぶ。
商店街のはずれには、「電気湯」という強烈な名前の銭湯もある。通りの端には
おこぼれを待ちかまえているネコ。あちこちで井戸端会議が開催され、もつ屋の
店先では今日もおっちゃんたちがビールを片手にゲラゲラ笑っている。

夏。隅田川の花火大会は、毎年6Fにある自宅のベランダで見ることにしている。
その日は、商店街の店も早めに終わる。商店街の店の多くは3F建て。屋根はなく
屋上になっている。花火が上がる頃には、至るところの屋上で宴会がはじまる。
そこにいる全員が思い思いに花火を楽しみ、クライマックスの後は周囲一帯から
湧き起こる歓声と拍手が、花火の煙がたなびく夜空で一つになってこだまする。

師走も半ばを過ぎると、商店街の集会所では、毎年恒例の現金つかみ取り大会が
行われる。10円、100円、500円、1000円の箱があり、みんな一喜一憂の大騒ぎだ。
こうした年末の賑わいは大晦日の夜まで続く。その中に身を置くのが、なんだか
心地よい。会話がある。活気がある。たとえ他人同士であっても、その商店街の
空気を共有しているという一体感を感じるのだ。

少し離れた場所に、地域活性化をもくろんだ新しいショッピングモールが出来た。
商店街よりも、むしろ多いくらいの人で賑わっている。でも何か違和感があった。
賑わってはいるものの、血の通った感じがしないのだ。あくまでも、たくさんの
他人同士がすれ違っているだけ、場所を共有しているだけに過ぎない、と感じた。

今、日本の商店街はどんどん活気を失い、ショッピングモールや大型スーパーに
取って替わられている。利便性を考えると、圧倒的に便利なのは確かだ。

しかし、ショッピングモールには、孤独そうなお年寄りばかりが目についた。

元気な商店街には、青筋を立てて誰かに何かを吠えているじーさんや、やたらと
お喋りなばーちゃんが、蒲焼きと焼き鳥の匂い漂う路地を、今日も闊歩している。

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リレーコラムをご覧の皆さま、1週間お付き合い頂き、ありがとうございました。
ずっとバカ話もなんなので、最後はちょっとマジメにしてみました。

ところで先週担当の伊田さんは、いたずら好きでモノマネが得意。よく僕の家の
留守番電話に柴田恭平(ソックリ!)のマネで、「ドラえもん」や「君が代」を
歌い上げたり、アントニオ猪木(これまたソックリ!!)のマネで、「みなさん
元気ですかーっ!」「バカヤロー」「いくぞー、1、2、3、ダァーーッ!!」とか、
入れてくれました。内容よりも家で1人で留守電に入れてるシーンを想像すると
今でも笑えます。そういや会社の外線電話もよく柴田恭平で出ていましたね。

さて、来週のコラムは、I&S/BBDOの本庄巧さんです。温厚でやさしい人です。酒
さえ飲まなければ。転職されてからはもう暴れてないですか?突然「俺を殺して
くれーっ」とか叫ばれても困るんです。では本庄さん、よろしくお願いします。

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