リレーコラムについて

黒須田先生の先生たち

加藤忠生

この春、「川柳うきよ鏡」(新潮新書・小沢昭一著)が
本屋の平積みになっていた。とりわけ川柳が趣味、
という訳ではないが、生命保険会社が出す
「サラリーマン川柳」は好んで通勤の途中に読んでいる。
「ニヤリ」としたり、「ナルホド」と相槌を打ったりしている。
時には「ウマイ」と声が出たり、吹き出してしまう傑作がある。
この間など、前に座っていたOLが、僕の方を見上げ、
狂人だと思ったのか、サッとドアの方へ行ってしまった。
話が外れた。「サラ柳」のことではなく、
「川柳うきよ鏡」である。
この中で、小沢氏が、川柳のおすすめ本を挙げていた。
一冊が、川柳作家岸本水府の伝記で、
「道頓堀の雨で別れて以来なり」中公文庫、田辺聖子著 上・中・下
          ・
以前、黒須田先生と、戦前のコピーライターの話になって、
東の片岡敏郎、西の岸本水府と言っていたことを思い出した。
片岡敏郎の話はTCC編で
「広告のエポックの人、片岡敏郎」という本がある。
このほか、山口瞳が「男性自身」の中で書いてあったり、
マドラ出版の「スモカ広告全集」も刊行されている。
ご存知とは思いますが、いくつか挙げてみる。
●ホホホホホ と笑ふても歯が黒うては フフフフフ
●カラタチの花は白いよ スモカの歯はもっともっと白いよう
●スモカで磨いた三日目の朝はわざわざ吃ってみせて
 旦那!お歯お歯お早う!
同じ商品スモカで1000本以上の傑作を書いている。
天才である。
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片岡敏郎の作品集は、いろいろなところで知ることができるが、
岸本水府のことは勉強不足のせいか見ることがなかった。
黒須田先生は、森永の広告を作っていたから
大阪のグリコの水府のことを知っていたのではなかろうか。
川柳の世界では超大家。広告人としてより、
川柳作家として生涯をおくった人だから作品集がないのであろう。
「岸本水府全仕事・広告」などという本があってもいいと思う。
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●コドモハカゼノコ グリコノコ
●ポケットハ グリコヲイレルトコロ
●グリコタベタラカゼヒカヌ
●オトウサンハバット ボクハグリコ

新聞の突出しぐらいの小さな広告で、イラストとコピーだけ。
当時は豆広告と呼んでいたらしい。イラストも水府。
田辺聖子の文章を引用する。
●ジャンケン グリコ
 「グーはグリコ。チョキはチョコレート。パーはパイナップル。
  3ツの手の形を描き、グリコだけ大きく上段にある」
          ・
学校の帰り道、神社の階段などで、上り下りしながら、
ジャンケンポン。チ・ヨ・コ・レ・イ・ト等と
遊んだことありませんでしたか。
流行語というより、生活の中に、子どもの遊びの中に
グ・リ・コが入り込んでしまったことは凄い。
4年で300点以上、この豆広告を作ったという。
全部見てみたいものだ。
          ・
書きながら、気がついたことだが、ほとんどのコピーに
「グリコ」が入っている。
昭和の初期に、効果的なコピー作法ができあがっている。
          ・
「商品名を入れ込んだキャッチフレーズを提出すると、
 スポンサー受けはいいぞ。」
また、黒須田先生の言葉を思い出した。

次は「啖呵売」の話をと思っていますが。

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