リレーコラムについて

あの頃(1)

蛭田瑞穂

4年くらい前の夏、いやもっと前かも知れないが、
プレイステーションの「ぼくのなつやすみ」というゲームを買った。

発売後数年を経てプライスダウンしたバージョンだったから、
ウイニングイレブン8みたいに、
発売日初日に買う、というわけではなかった。
ある日、欲しくなったのだ。

その時、白金高輪にある、
東京オリンピックの頃に建てられたマンションの、
16平米くらいのものすごく狭い部屋に住んでいた。
マンションの隣を桜田通りだったか、国道何号線だったかの
幅の広い道が通ってて、唯一ある窓から見える風景が、
クルマやトラックの絶え間ない流れ。
というような部屋だった。
季節は夏。
そんなある日、僕は「ぼくのなつやすみ」が欲しくなった。

「ぼくのなつやすみ」をプレイして思ったのは、
なんて単調なゲームなんだろう。
ということだった。
途中でプレイするのが飽きるくらいに。

朝起きる。ラジオ体操をする。朝ご飯を食べる。
遊びに行く。家に帰って、夕ご飯を食べる。
絵日記を書いて寝る。また朝起きる・・・。
毎日がこの繰り返し。
昨日と同じ今日。今日と同じ明日。明日と同じあさって。

でも、思った。
その単調さこそが、貴重だったのだと。
今の生活の中で、あの頃の単調さは、もう戻らない。
そういう意味で「ぼくのなつやすみ」はリアルだった。

今日は深夜12時過ぎまで会社で仕事をしている。
明日は朝の9時からスタジオで撮影。

今年の夏、僕はまだ夏休みを取っていない。

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