リレーコラムについて

李朝陶磁(リチョウトウジ)のこと。

三神明仁

 話はどんどんシブクなっていく。
いよいよ骨董の話だ。
語るに100万年早いが、お許しください。
師は骨董に旅立ってしまった。
自称弟子としては、追わざるをえない。
まあ、高校生時分から、アンティークのガラスのコップを
集めていたこともあり、古いものは大好きだ。
 
 そんな折、また師匠とお話する機会があった。
「骨董と言うと、私も大好きですが、先生も骨董市とか行かれるんですか」。
今から思えば、顔から火が出るような系の質問だが、
師はさらりと答えた。
「いや日本橋とか、」明らかに顔が曇っていた。
こんな無知なヤツに話しても無駄だ。
後で知ったのだが、ひと口に骨董と言っても、
日曜市で100円みたいなものから、古美術といわれるファインアートのものまで。
あまりにも世界は広く奥深かったのである。
しかも師が追いかけていたのは博物館入りするようなものだった。
青春は青い。

 でも、いろいろ門をたたくうちに、自分の好みもわかってくる。
貧乏人は貧乏人なりに愉しめるのも骨董のいいところだ。
李朝といわれる、李氏朝鮮時代の陶磁器が好きだ。
萩焼きの祖先というか、まあ日本人好みの典型である。
骨董の世界にも実はブランドがあり、なんか変な感じもするが、
要は人気と言うか、ものの数が少ないのに欲しい人が多いものがある。
しかも時代とともに変遷する。
ここらが、広告の世界とも似ている。
李朝はいわゆるブランドだった。
でもよく調べてみると、利休さん以前は、あまり評価されていなかったようだ。
無名の陶工が、てらわず無心に作った良さがある云々と、よく評論されているが、
いわゆる日常使いの大衆向け雑器だったようだ。
それが後年、贋物がでたり、賞狙いの作品がでてきたりするあたりが、
妙に人間臭いところなのだが。

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