リレーコラムについて

遠い記憶の中の人々 “転校生”

髙橋稔

ボクの通った小学校は、1学年100人そこそこの
小ぶりな学校で、田舎でもあったので、
年にひとり転校生が来るか来ないかという感じでした。
はっきり憶えていないのですが、
その女の子が転校して来たのは、3年から5年の
間のどこかだったと思います。
古い言い方ですが、その子は
(うちの小学校のテイストにはない)
とっても“ハクイ子”でした。
クラスで先生から紹介され、ボクのまえの席に座るために
歩いてきました。
そのときの記憶だけが鮮明にあるのですが、
その子が席に座る瞬間、ボクはその子の椅子を引いていました。
もちろんその子は尻餅をつき、痛い目をみたでしょうが、
そのあとのことは憶えていません。
引っ込み思案だったボクが、なぜそんなことをしたのか
いまでも謎ですが、田舎の小学生のボクにとっては、
とてもカルチャーショックだったその子の風貌が、
その子の気を惹きたいという気持ちと、
転校生に対する洗礼行為とを一瞬のうちに合体させたらしいのです。
(やりながらも罪の意識がよぎっていました)
1年もしないうちに、その子はまた転校していきました。
それ以外のその子の思い出はありません。
そんなことをしたことを、いまも後悔しています。

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