リレーコラムについて

コピーライターのデジタル化における課題

渡邉寛文

東急エージェンシー望月さんよりバトンを受け取りました渡邉寛文です。2009年に「相模ロード」という道路に白線を引く会社のポスターで「止まれ」というビジュアルに「俺のヒトコトは、総理大臣すら従う。」というコピーを書いて新人賞をいただき入会しました。

バトンを渡してくださった望月さんとの出会いは約10年前。チラシの営業マンだった時代に通っていた映像テクノアカデミアという広告学校で講師と生徒という立場で知り合いました。同じ会社で働いたことはありませんが、私の広告クリエイティブの師匠であり、人生で最も影響を受けた広告クリエイターです。アドマンとしてのマインドセットや広告クリエイターとしての基礎スキルなど数えきれないほどの物事を教わりました。私が運よくTCC新人賞も受賞することができたのも望月さんのご指導の賜物だと思います。

ところで、私は新人賞を受賞して以来、目立った受賞歴もなく、最近では広告賞へ応募すらほとんどしておりません(できていないとも言えます)。そんな私が再びこのリレーコラムを書くことになるとは予想していなかったので何を書くか悩みましたが、せっかくなので今回のコラムでは空白の9年間で身を持って実践してきた「コピーライターならびに広告クリエイターのデジタル化」をテーマに書いていきたいと思っています。本日より一週間よろしくお願いします。

まず私の経歴を簡単にご紹介させていただきます。
略歴としては下記の通りです。

チラシの専門広告代理店の営業職(TCC新人賞受賞)
→CMプロダクションのプランナー職
→名古屋の総合広告代理店でWEB制作職
→東京の総合広告代理店でデジタルマーケティング職
→事業会社で新規事業のマーケティング職

略歴から分かる通り、私はこれまで4回転職しています。現在38歳なのでだいたい3年に1回くらいのペースで転職しています。「趣味は転職です」と言ってしまうくらい社会人人生に転職がついて回っています(誤解してほしくありませんが、どの会社も骨を埋める覚悟で働いておりました)。
基本的には広告業界でクリエイティブを軸にキャリアを重ねてきましたが、本年3月に「50歳を過ぎてもマーケティングのど真ん中でアイデアを武器に仕事がしたい」と考え事業会社へ5社目の転職を経験し、とうとう広告クリエイターではなくなりました。

私は現職で広告クリエイターの肩書きはありませんが、広告クリエイターのときと比べて思想自体はあまり変わっておりません。あくまで「50歳を過ぎてもマーケティングのど真ん中でアイデアを武器に仕事がしたい」という意志を実現しようと考え現職に転職しています。私が50歳の年。西暦では2030年に当たります。2030年の広告業界はどうなっているのか?偶然にも2030年の米国広告業界の市場を予測した記事を発見しましたのでピックアップさせていただきます。

参考記事:Markezine「2030年、米国広告業界「次の12年」予測」
https://markezine.jp/article/detail/27741

大筋で予想できる内容かもしれませんが、ブランディングもダイレクトも広告市場をけん引するのはデジタル広告になると言及されており、私自身の主観も相違なくデジタルが広告の中心になると思っております。2017年に渋谷のインターネット専業広告代理店の売上高が、虎ノ門の総合広告代理店の売上高をついに上回りました。これから広告代理業ならびにマーケティング支援業を中心地点で携わっていくのであれば、デジタル化は不可欠なテーマと言えると思います。

かく言う私も名古屋の広告代理店の時代にマスの広告クリエイター(コピーライター/CMプランナー)からデジタルの広告クリエイターへ転身した一人です。
TCC新人賞の受賞をきっかけにいくつかのチャンスに恵まれ、マス広告のクリエイターとしての表現スキルを高めていく道も少なからずありましたが、これからも長く続く人生を視野に入れてデジタルの世界に身を投じました。
つくったこともないWEBサイトの仕事をプレゼンで獲ってきて(たまたま獲れた)強引に実績をつくりWEB制作に関する知見をため、デジタルの大海原に航海をはじめました(何度も沈みかけました)。その結果、単純なサイト制作やアクセス解析だけではなく、コンテンツマーケティング・CRM・SNSマーケティング・WEBメディアコンサルティング・VR・新規事業企画などなどデジタルにおける多岐に渡る業務を推進する機会に恵まれ、幸いにもクライアント企業からデジタル担当者として指名で相談をいただけるようになりました。

そんな私だから、マスの広告クリエイターがデジタル化する上での障壁になるであろう問題点が実体験として少しだけわかったりします。広告クリエイターのデジタルトランスフォームにおける最大の障壁は「アウトプット至上主義」を根源としたマスの広告クリエイターのマインドセットにあると捉えています。もちろん、アウトプットは最終的な広告効果を左右させるし大切な要素のひとつだと思いますが、それと同じくらい(あるいはそれ以上に)これからの広告・マーケティングには「プロセス」が重要な要素になると考えています。

現在は言わずもがな情報洪水の時代です。いかにしてアイデアを凝らしてアウトプットを磨こうにも、そもそも狙ったターゲットに広告を届けることが難しく、せっかく作った広告を見つけてもらうことでさえ叶わなかったりします。だからこそ、ターゲット設定やシナリオ設計といったアウトプットの手前にあるマーケティングの実行プロセスが重要で、プロセスにおけるアイデアが広告効果に強く影響を与えると考えています。望月さんもコラムで書かれておりましたが、表現はそのうちAIが特定のルールにもとづき自動的に生成する時代がやってきます(すでに一部ではじまっています)。しかし、AIのルールづくりや活用方法にはまだまだアイデアが必要だし、そのアイデア次第で広告の新しい実行プロセスが生み出せるかもしれません。

アウトプットだけが意志を届ける術ではないし、アウトプットまでのプロセスにも意志を込めることができると思います。

「脱・アウトプット至上主義!」
これからの広告クリエイターに必要なマインドだと私は思います。
(もちろんアウトプットが大切なのは重々承知ですが)

明日からはマーケティングの実行プロセスにおけるコピーライターの武器について言及していきたいと思っております。

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