字幕といえば戸田さんだ
戸田さんからバトンをいただきました、同じく2007年入会の熊谷卓彦です。
戸田さんからラインをいただいたのも何年振りのことで、
復縁させてくれたリレーコラムに感謝します。
それにしても戸田さんは全国に何人くらいいらっしゃるのでしょう。
同期の間では戸田さんといえば大輔さんですが、
世間一般では戸田さんといえば奈津子さんでしょうか。
私の字幕の最初の記憶は「E.T ウチ デンワ」でした。
吹き替え映画の初体験でもあったはず。
親に字幕を読めるか心配された記憶があります。
わざわざ車で2時間の郡山市(福島県)の映画館まで行きました。
当時私は6歳くらいのはずで、カタカナなので読めて印象に残ったのでしょう。
“Phone home”の”home”くらいは聞き取れたような気もするのですが
記憶は捏造されていくものですからどうでしょう。
そもそも字幕をみた記憶すら捏造されているような‥。
E.T.の字幕も戸田さんです。
私が小学校に入るかどうかだった頃にはすでにご活躍。
戸田さんすごいです。
(ちなみに今発売されている『婦人画報』2026年9月号、戸田さんの保存版ですのでぜひ)
そして中学生が洋楽を聴くと、歌詞を翻訳しようとします。
最初の記憶はU2のある歌の冒頭です。
“I can’t believe the news today” を辞書を片手に
「私は今日のニュースを信じることができない」という感じにして
担任の唐司(とうのす)先生にみせたところ、
「”news”は”事件”でもいいかもすんないね(会津弁)」と言われ、
「そうがもしんないね」と思っていると、公式の動画では
「信じられない今日の出来事」と字幕があってかっこいいなあと。
でも、のちのち、知恵をつけるにつれ、
「事件(血の日曜日)がテレビやラジオで流れている」というニュアンスをだしたいなら
「ニュース」そのままのほうがいいかもとも思ったり。
一行を訳するのにも、文化的背景‥作品の中の位置付け‥口調‥
考えなければいけないことは尽きなそうです。
そして今、世界は偏見に自覚的であろうとしています。
アメリカやイタリアが舞台の映画で、
田舎の出身の人が東北弁をしゃべることに違和感があったり‥しますん‥か?
ニューヨークの人にとってのロサンゼルスの人の印象は、
東京の人にとってどこの土地の人の印象になるのでしょう。
東北でしょうか、大阪でしょうか、福岡でしょうか。
映画の舞台の構造をできるだけ緻密にとらえて
異文化に置き換えなければいけないのでしょう。
世界に動画を配信しているある会社では、
字幕の入れ方に相当に神経を注いでいるとききました。
言葉だけでなく、相互の国の文化をわからなければ。
でも、すべての文化を知ることは不可能です。
想像する力、想像を支える知識、高度な技術と矜持があって
字幕の一行が書かれているのだろうと思います。
すごいですね、翻訳者。
海外のコピーを日本語に翻訳しているコピーライターも。
一方で、英語の映画くらいは字幕を読まずにわかりたいなあ、とも思います。
すると、
日本人は、
ハリウッド映画を
観に行くというより、
読みに行っている。
というコピーがありました。
戸田さんの、
戸田大輔さんの新人賞を受賞されたコピーでした。
戸田さんと戸田さんがここで出会っていたのでした。
戸田さんすごい。
そんな戸田さんは私を「仏様」と。
リレーコラムをひきうけただけなのに、ありがたや。
たどたどしくもどたどたと
書かせていただきます。
5日間どうぞよろしくお願いいたします。
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