リレーコラムについて

ある日曜日のこと。

三井浩

仕事で遅くなり、その流れでNGの永井裕明さん、ADKの今坂英一さんと食事をした。
10時を回ってからの、よくありがちな遅い夕食。
永井さんとは長く仕事をさせていただいている。調べたら、もう15年にもなる。PRGRの姉妹ブランド、インテストというゴルフクラブの仕事が最初だった。まだ二人とも事務所を立ち上げたばかり。気分は青春だったな。上野の生まれだと聞き、僕の生まれた向島との中間、浅草のバーで呑んだりした。困ったときはなんとかしてくれる、信頼できるアートディレクターの一人だ。
今坂さんとは、彼が高橋稔さんの事務所にいるときに知り合った。日暮真三さんに高橋さんの事務所においでといわれて、のこのこ行ったと記憶している。これはゴルフ場の仕事で結局、今坂さんと僕で仕事をした。以来、仕事はもちろん、大切なゴルフ友達の一人となった。今坂さんは京都の生まれで食べ物にうるさい。その日も「出汁」の話で盛り上がった。僕は何でも醤油をかけてしまう野蛮人なのだ。
さて、ラストオーダーとかなんとかで、電車のあるうちに店を追い出された。素直に今日は帰るか。表参道から押上まで半蔵門線一本で帰れるようになったのがうれしい。日曜日だったので電車も空いている。すぐに座ってスティーブン・キングのドリーム・キャッチャー3を読み始めた。気がつけば、もう押上の前の駅、錦糸町に着いている。
隣の車両におじさんが乗ってきたのが見えた。休みの日だというのにスーツ姿でかなり酔っている。吊革につかまりながら、席に座る姿が危なっかしい。
僕はipodを取り出して降りる準備をし始めた。電車が着いてドアが開き、ホームを出口の方向へ歩き出した。ジャクスン・ブラウンはやっぱりいいな。
そう思った目の前を人影が走った。誰かが、ダッシュしている。それもホームを横切るように。スーツ姿のおじさんだ。でもそっちは出口じゃなくて反対側の線路だよ。と、おじさんが飛んだ。そのまま線路にダイブした。えっ。
何人かが気づいて線路をのぞき込んだ。電車を止めろ、と叫ぶ人。空気が、熱くざわついた。が、幸い電車の来る様子はない。僕ものぞき込んでみた。ダイブしたまんまの形、スルメの状態で、二本の線路の間におじさんのうつぶせになっていた。
ぴくりとも動かない。(つづく)

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